第568話 歌姫オンステージ11(1)
時は少し戻り、レイゼロールと影人がまだ戦っていた時。シェルディアと邂逅した風音、真夏、刀時も戦闘に入っていた。
「見た目が子供だからって容赦はしないわ! 行きなさい呪符たちよ!」
真夏が服の袖から大量の呪符を取り出し、シェルディアに向かってそれらを飛来させた。
「ふふっ、まずはサービスよ。動かないでいてあげる」
だが、シェルディアはそれらの呪符を避けようとはしなかった。
そして、真夏の放った呪符たちは全てシェルディアの体に貼り付いた。
「随分とナメてくれるじゃない。なら、そのまま呪ってやるわ、ガキンチョ!」
シェルディアの言葉を聞いた真夏は、キレたように声を荒げ、シェルディアに貼り付いた呪符に力を流し込んだ。
「あら? 動けないわ。ふふっ、あなた不思議な力を使うのね」
全身が呪われた事により、体が動かせなくなったシェルディアは、ただ笑みを浮かべるだけだった。
「風音、剱原。これであのロリは動けないわ。後は煮るなり焼くなり好きに行くわよ」
「それはありがたいけどよ・・・・・・お前、マジで色々躊躇ないな。一応、見た目は子供だぜあの子」
「相変わらずあんたはアホね剱原。流石、さっき殺されかけてたアホが言う事は違うわ。こういうのはね、本気でぶっ倒しにいかないと、負けるか死ぬかって相場が決まってんのよ」
真性のアホを見るような目を刀時に向けながら、真夏はそう言葉を述べた。
「どこの相場だよ・・・・・・・でも、確かにそうだな。ここは戦場であの子は敵。なら、容赦しないのが普通だ。悪りぃ、ちょっと見た目に絆されてた」
真夏の言葉に軽くツッコミを入れながらも、刀時は自分の言葉が甘かった事を認めた。真夏のどこまでも正直な言葉が耳に痛い。
「剱原さん、先ほども言いましたが容赦は本当に無用です。本気の本気で行かなければ、私たちは死にますから」
「・・・・りょーかい。本気って言うなら、風音ちゃんは『光臨』しないのかい? さっきやりかけてたけど」
「・・・・・たぶん、しません。『光臨』は確かに強力で、さっきのアイティレのように時間を区切って使用する事も出来ますが、力の消費が凄まじいです。この状況、本当は出し惜しみはしていられないんですけど、残りの力の量を考えると・・・・・・・・・」
「そっか・・・・・・・」
刀時の問いかけに、風音はそう答えを返す。風音が『光臨』を使用しない理由は確かに、残りの力の関係もあった。風音もこの山に入ってから、ずっと戦いっぱなしだからだ。
だが、風音が『光臨』を使わない理由は実はもう1つあった。
(・・・・・・弱っているであろうキベリアとあのジャージの闇人だけなら、『光臨』を使えば確実に浄化できる自信があったけど・・・・・・・・・アレが相手となると、『光臨』しても勝てるかどうか・・・・・・)
そう、それが2つ目の理由。いま目の前にいる少女の姿をしたモノに、風音は『光臨』を使っても勝てる気はあまり、いやほとんどしなかった。それは、シェルディアの力の一端を感じた事のある風音だからこそ、またシェルディアが内に秘めている力の一部を見る事が出来るゆえの理由だった。




