表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
552/2051

第552話 歌姫オンステージ7(5)

(とりあえずジャージの闇人を1発殴って、後は適当に抜けるか。レイゼロールの造兵どもも、邪魔になるようなら蹴散らす)

 速すぎる世界の中、影人はそう思考した。本来ならば、この速度で動けば視界はよく見えなくなるはずだが、しかし影人には世界がスローモーションに見えていた。先ほど、『加速』と同時に眼を闇で強化していたからだ。

 影人はまず響斬の方に肉薄すると、響斬の腹部に右のストレートを打ち込んだ。その際、響斬の右手と刀を拘束していた鎖を解除する。身体能力を闇で強化された影人の一撃をモロに喰らった響斬は、「がっ・・・・・!?」と苦悶の声を上げて、数十メートル先に吹っ飛んだ。これで、殺されそうだった守護者は大丈夫だろう。

 影人は響斬をぶっ飛ばすと、そのまま視力とスピードを全開にし、造兵の軍団へと向かっていく。無駄な力はあまり使いたくはないので、基本は避けながら進んでいくが、どうしても邪魔な造兵がいた場合は、殴って骨を砕いていった。

 影人の体感にしては10秒ほどといったところだが、実際の時間としては2秒か3秒ほど。たったそれだけの時間で、影人はこの戦場を抜けた。 

「は・・・・・・・・・・? い、いつの間に・・・・・・!?」

 1番最初に声を上げたのは真夏だった。気がつけばスプリガンは山の上部の方にいた。位置的にスプリガンに最も近かったのが真夏だったからだ。

「「「「「なっ・・・・・・!?」」」」」

 アイティレ、風音、ソニア、光司、キベリアも真夏に一拍遅れ驚愕したような表情を浮かべる。響斬は影人にぶっ飛ばされたので反応はなく、刀時もまだ少し混乱していたようで、反応はなかった。

「・・・・・・じゃあな」

 眼の強化の解除と加速を解除した影人は、チラリと後方を振り返りそう呟くと、山の上部へと向かって再び走り始めた。

「ま、待てッ! スプリガン!」

 光司が後方からそんな言葉を掛けてきたが、影人はその言葉を無視した。













(とりあえず、後はレイゼロールを追うだけだな)

 戦場を抜けた影人は、途中遭遇したレイゼロールの造兵どもを蹴散らしながら、山道を走り続けていた。今のところ自分の位置は、山の半分以上を超えた辺り、6合目か7合目くらいか。

(レイゼロールが目指してるのはたぶん頂上だよな。今のところ出会ってないってなると、そうとしか思えねえ。ちっ、今レイゼロールの奴はどれくらいの位置にいやがるんだ・・・・・)

 戦場自体は無理矢理にはなったが、かなり早く突破したのでロス時間はあまりないはずだ。しかし、未だにレイゼロールの後ろ姿や足音も聞こえないとなると、自分とレイゼロールはかなり離れているという計算になる。 

「・・・・・・・・・あいつと当たるまで、体力と力の方は出来るだけ温存しておこうと思ってたが、仕方ねえ。『加速』を使って一気に距離を縮め――」 

 影人がそう呟こうとした時、


 ――不吉は突如として訪れた。 

 

 「ッ!?」

 山道を駆けていた影人の前に、黒いフードに身を包んだ謎の人物が立ち塞がる。その黒フードの人物は右手に黒い、までもが黒く染まった凶々しい大鎌を携えていた。

 その姿は謎の人物が携えている武器と相まって、死神という存在を想起させた。

「・・・・・・・・・・」

 そして、その死神は向かって来る影人に向かって、何の躊躇いもなくその大鎌を振るってきた。

「ちっ・・・・・・!」

 影人は急停止して、その攻撃をバックステップで避けた。

「・・・・・・・・・・・誰だ、お前は?」

 急に攻撃を受けた影人は、謎の黒フードの人物に警戒の視線を向けてそう問うた。光導姫や守護者は影人が先に攻撃しない限り、影人に対して今は攻撃できないはずだ。それが、ラルバと会議で決まった意見を元に取り決めた決定だと、ソレイユは言っていた。

(って事は、こいつは光導姫や守護者じゃないのか? そうであるなら・・・・・・・こいつも闇人か?)

 黒いローブから覗く手を見るに、恐らくは男だ。だが、この死神のような人物が何者なのか影人には分からなかった。

『ッ!? あの大鎌は・・・・・・・マジかよ・・・・・!』

(イヴ・・・・・・・・・・?)

 しかし、イヴは何かを知っているように声を震わせた。そんなイヴの様子に影人は疑問を抱く。

『おい影人、よく聞け! あの大鎌から絶対にダメージを受けるなよ! でなきゃ、死ぬぞ・・・・・!』

(は? どういう事だよ? お前、こいつについて何か知ってんのか?)

 警戒感を全開にしたような声でイヴは影人の内からそう言った。イヴの言葉の意味がまだ正確には理解できなかった影人は、心の内でイヴにそう質問をした。

 すると、イヴは影人の質問にこう答えた。

『あの黒フードの事は知らねえよ。ただ、あいつが持ってる武器・・・・・・・・あの忌み武器を俺は知ってる』

 そして、イヴはその忌み武器の名を影人へと教えた。

『あれは「フェルフィズの大鎌」。遥か神代の時代に失われたはずの・・・・・・神殺しの大鎌だ・・・・・・!』

(神殺しの大鎌・・・・・・・・・?)

 その聞き覚えのない言葉に、影人は内心おうむ返しにそう聞き返しただけだった。


 ――かくして、

 この場において、2人の正体不明・目的不明の怪人は相対した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ