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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第55話 奸計(3)

「全く、面倒な偶然に巻き込まれたな!」

 エメラルドグリーンのフードが特徴的な光導姫、アカツキはそう毒づきながら壮麗な剣を振るっていた。

「――!」

 よく分からない声を上げながら、おそらく獣人タイプであろう闇奴はその鋭い爪でアカツキの剣を受け止めた。

「ちっ!」

 アカツキは1度バックステップで距離を取ると、その合成獣のような奇怪な見た目の闇奴を睨め付けた。

 光導姫アカツキ――早川暁理はたまたまこの町の大通りをぶらりと歩いていた。コンビニにちょっとしたお菓子を買いに行こうとしていた所、突然大通りにこの闇奴が現れたのだ。

 当然、いきなり現れた闇奴という怪物に人々は大混乱かと思われたが、そこはたまたまいた暁理が光導姫に変身し、人々は展開された人払いの結界の効果により、闇奴のことなど眼中にないように、無意識のうちに結界の範囲外へと非難した。

つくづく便利な結界だと暁理は思い知らされたものだ。

「しっかし、厄介だな・・・・・・」

 稀にこのような見た目の闇奴と戦うことがあるが、この闇奴のように奇妙な見た目の闇奴は通常の闇奴より強く厄介と相場が決まっている。アカツキもこのキメラのような闇奴と対峙したのはこれで3度目だ。

「・・・・ま、泣き言は言ってられないけどね」

 アカツキは不敵な笑みを浮かべると、再び剣を構えて闇奴に肉薄した。

 しかし、そこで後方から突如声が響いた。

「アカツキさん! 避けてっ!」

「ッ!?」

 その聞き覚えのある声に反応したアカツキは自らの光導姫としての力、風の力を利用して自らの体を横に移動させる。

「――!」

 すると、氷弾ひょうだんが飛来し闇奴に直撃する。闇奴は相変わらずよくわからない声を上げ、よろめいた。

「今のは――」

 アカツキは氷弾が放たれたであろう方向を振り向き、その姿を見ると風の力を利用し、彼女たちの近くまで移動した。

「やあ、ブルーシャインにレッドシャイン。この前ぶりだね」

「はい、アカツキさん!」

「ええ、そうね」

 アカツキの言葉に光導姫レッドシャインとブルーシャインこと朝宮陽華と月下明夜はそろって言葉を返した。

「あれ? でも何でアカツキさんがいるんですか? 私たちがソレイユ様から合図が送られたってことは、あの闇奴は私たちの担当なんですよね?」

 陽華が不思議そうにアカツキに問いかける。その質問にアカツキは手短に答えようとした。

「ああ、それはね――」

「――!」

 しかしアカツキが質問に答えようとしたとき、闇奴が怒り狂ったように、自らの背中から生えている片翼の翼から鋭い羽のようなものを飛ばしてきた。

「っ! 話は後だ!」

「「はい!」」

 アカツキと陽華と明夜はその攻撃をなんとか避ける。

 だが、その鋭い羽は尽きる気配なく3人に降り注ぐ。

「くそっ! 本当に厄介な奴だよッ!」

 アカツキが風の力を利用して羽に対しての逆風を作る。その結果、その刃のような羽は途中で勢いを失い、地に落ちる。

「ありがとう、アカツキさん」

「どういたしまして――と、それより守護者の彼は今日は一緒じゃないんだね」

 明夜のお礼の言葉に暁理はニコリと笑い、ついでに2人に軽い質問をする。その間にも闇奴は羽を飛ばしてきているが、それらは全てアカツキの力により無効化されている。ゆえに少しの時間ならあるというわけだ。

 アカツキがこのような質問をした理由はかかしの言葉を思い出したからだ。スプリガンなる謎の人物の警戒ゆえに、守護者は闇奴・闇人との戦闘に必ずいなくてはならない。少しニュアンスが違うがかかしが言っていたのはそのような事だった。

「そうなんですよね。いつもは大体現場で合流するんですけど、今日はまだ姿が見えなくて――」

 陽華が自分もなぜだかわからないといった感じでアカツキの質問に答えた。

「それはまた何でだろうね」

 アカツキがそんな言葉を漏らすと、その質問に答えるかのように男の声が後方から聞こえてきた。

「ああ、それは俺がいるからだと思うぜ」

「・・・・・・・・なるほど、合点がいったよ」

 そのどこか軽薄さを含んだ声を聞いて、アカツキはその人物が誰だか理解した。全く今日は声だけでよく誰が誰だかわかる日のようだ。

 陽華と明夜が不思議そうにその人物を見ていると、アカツキは振り返ってその人物の名を呼んだ。

「またもや君ってわけだ、かかし」

「だーかーら、俺の守護者名はスケアクロウだって言ってんだろう?」

 そこにいたのはどこか軽薄な守護者だった。

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