第549話 歌姫オンステージ7(2)
『だからレイゼロールの気配隠蔽も解除されて、気配が急に露出したんだろうよ。まあ、強いて言やこのデメリットはレイゼロールも受けてるから、レイゼロールも転移は出来ないってこった。たぶん山の中をお前と同じように走ってるから、追いつける可能性は十分にあるぜ』
「確かにそれは朗報っちゃ朗報だな・・・・・」
イヴの追加の言葉にそう言葉を返しながらも、影人はイヴの説明を聞いていた時から思っていた疑問を言葉に出した。
「・・・・・・なあ、さっきの説明を聞いてまた疑問が2つあるんだが、何で俺とお前は普通に念話出来てるんだ? あと気配云々の話があったが、俺の気配ってやつも、もう露出してんのか?」
そう、それが疑問だった。なぜソレイユとは念話が出来ずにイヴとは念話が出来るのか。もう1つの疑問も気になるは気になるが、最大の疑問は前者の方だ。
『そいつは簡単だ。スプリガン状態のお前は、言うなれば俺と一体化してるようなもんだ。だから俺たちの場合は経路云々は関係ないんだよ。要は自分同士と話してるようなもんだからな。もう1つの気配云々に関しては安心しろ。この山の気配隠蔽の強制解除はそれが能力だった場合だ。お前の場合は、気配隠蔽がその服装に練り込まれてるから、気配は変わらず遮断、隠蔽されたままだ』
「そうか・・・・・不幸中の幸いってやつだな」
イヴの答えを聞き、疑問が解消された影人は判明した情報を整理して、どうするべきかを思考した。
(俺の仕事はレイゼロールを追って、レイゼロールの目的を阻害すること。俺の状況としては、この山の中では転移が使えない、ソレイユと念話が出来ない2つの制限がある事。全体の状況としては、恐らくもう最上位闇人と光導姫と守護者どもは戦闘に突入しているって事くらいか)
さあどうするか。影人がそう考えた時、前方の山の上部から何か音が聞こえてきた。何かの発射音や何かを弾くような音。更になぜか歌声までも。
「・・・・・戦闘音、この先か」
影人はその音を戦闘音だと判断し、辺りを見回した。山道の脇には木が群生していた。影人は真っ暗闇の林の中に身を移し、その林の中を進んで行った。
「やってるな。敵は・・・・・・・・・ああ、キベリアか。それにレイゼロールの造兵どもと・・・・・・・・あのジャージの男は誰だ?」
少しすると、戦闘が行われている場所が見えた。ソレイユが言っていた4人の光導姫、『提督』、『巫女』、『呪術師』、『歌姫』と、2人の守護者――光司と、冥との戦いの時にもいたあの和装の守護者――が、いま影人が呟いた者たちと戦っている。
(レイゼロールがいない。ってなると、あいつらは足止めか。レイゼロールはもう上の方に進んでるはず・・・・・・・・・まずいな。あいつらもレイゼロールを追えって指令は受けてるんだろうが、このままじゃ時間を無駄に削られるだけだ)
影人がそんな事を考えていると、イヴがどこか興奮したような声でこう言ってきた。




