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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第547話 歌姫オンステージ6(6)

「もちろん、これで終わりじゃないよ」

 響斬は刀時の左腕をそのまま押し込みながら、自分の右足で刀時の左足を内側から払う。その結果、刀時は完全に重心がぐらつき、姿勢を大きく崩した。

「ちょっとばかり痛いけど我慢しろよ、男の子だろ? ――我流、組合剣術。『首斬くびきり』」 

 響斬は少しだけ嗤うと、まずは隙だらけの刀時の左の顳顬こめかみ、そこに右手で握っていた剣の柄頭を思いきり叩きつけた。

「〜〜っ!?」

 激痛が刀時を襲う。しかし、激痛はそれで終わりではなかった。響斬は今度は刀時の左腕を握っていた自身の左手を外すと、刀時の髪を掴んだ。そして刀時の髪を思いきり下に引くと、刀時の顔面に左膝による一撃をぶちかました。

「ぶっ・・・・!?」

「ごめんごめん、すぐ介錯するから許してくれよ」

 派手に鼻血を噴き出す刀時に響斬はそう告げると、今度は刀時の髪を引っ張り上げた。必然上を向く刀時、そしてその状態は首が伸びた状態だ。響斬は右手に持っていた愛刀を刀時の首に目掛けて振るった。これで数秒後には、この守護者の首は胴体とお別れしている事だろう。

(上手く決まってよかったなー・・・・・)

 刀時の首に向かって刀を振るった響斬は、内心ホッと息を吐いた。

 過去に何度か戦った事のあった剱原流の剣術を響斬は知っていた。ゆえに、響斬はキベリアに身体能力を上げてもらうまでの刀時との攻防で数十秒は耐える事が出来たし、刀時の技の弱点も、『斬円』から『突窩』の流れも知っていたのだ。

(周囲に骸骨兵が多くいたから、あの回転する居合いはやって来ると思った。で、僕がそこをつけば、この守護者はあの刺突をしてくるだろうって事も読めてはいた。だから、ぼかぁこうやってカウンターを決める事が出来たんだ)

 ただ、カウンターを決めるためには1つだけ問題があった。それは響斬の反射速度だ。当然ながら、刺突が来ると分かっていてもそれに反応出来なければ意味がない。

 その反射速度の解決方法が、キベリアの魔法による自身の身体能力の強化だった。キベリアの身体能力の強化の中には、当然反射速度の強化も含まれている。そして、刀時の刺突にギリギリ反応できるであろう反射速度の倍率が3倍だと、響斬は考えていたのだ。

(結果は大成功で、最低倍率も予想通り。その他にも色々な事が噛み合ったけど、とりあえず1人は最上位を殺せた。今の僕の結果としちゃ、上々でしょ)

 今から人を殺すというのに、響斬には何の感情もない。しかし、それは当然だ。響斬が生まれた時代は戦や合戦がたくさんあった。そこでは人を殺すのなんて当たり前。敵を殺すのが普通。響斬も人間時代と闇人時代も含めて、もう数え切れないほど人を殺して来た。別に今更人間を殺すのに抵抗なんてものは無い。

「「剱原さん!?」」

「バカ何やってんのよ!?」

「『侍』! ちっ、どけ貴様らッ!」

「ッ!?」

 刀時の窮地に気がついた他の光導姫や守護者たちが叫ぶように声を上げる。風音と光司は絶望したように刀時の名を呼び、真夏とアイティレは驚きながらも刀時の元に駆けつけようとする。唯一、ソニアだけが歌っているため、刀時の身を案じるような言葉を出せなかったが、表情は驚愕と絶望が入り混じったようなものになっていた。

「いいわ! そのまま殺っちゃいなさい!」

 キベリアが嬉しそうな声を出しながら笑顔を浮かべた。これで多少はイライラがましになるだろう。

(・・・・・・・・・ははっ、こりゃ死んだな。情けねえ、敵を舐めて死ぬなんて、馬鹿もいいところだぜ・・・・・)

 死の気配がすぐそこに迫っているのがわかる。死の間際、刀時が思った事は自分の不甲斐なさに対する怒りであった。

 響斬の刀が刀時の首に触れる。刀時の首から少量の血が噴き出し、後は首が切断される。誰もがみな次の光景を予想していたその瞬間、

 幾条もの闇の鎖が虚空から出現し、響斬の右手と刀を縛った。

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