第545話 歌姫オンステージ6(4)
「でも、このままあの造兵に任せっきりってわけにはいかないよね? 僕たちの役割はあくまで時間稼ぎ。レイゼロール様が探し物の確認を行うまでは、僕たちはここであいつらを引き留めなきゃならない」
「分かってるわよ。あいつら寄ってたかって私1人苛めるもんだから、どいつか1人くらい殺したいけど・・・・・・」
「いや、君そんなにいじめられてないじゃん。それ言うなら僕1回左腕落とされてるんだぜ・・・・・?」
「そんなんは知らないわよ。うーん、殺すなら光導姫よりも守護者の方が楽だけど・・・・・・・・あ、そうだ」
キベリアは何かを思いついたように、響斬の方を見てきた。響斬は何故か嫌な予感がした。
「響斬、あんたあの和装の守護者との身体能力差どれくらいまで縮まれば殺せそう? 同倍率とかの答えはなしね」
「・・・・・・・・・そのニコニコ顔が恐いぜキベリアくん。でもそうだな・・・・・・・あの剱原流の守護者くん、腕はかなりのものだし、実戦慣れもしてる。だから強いって話なんだけど・・・・・・・・真剣同士のやり合いはまだ慣れてない。まあ、そればっかりは仕方ないと思うけどね」
響斬は刀時に対する分析を行いながら、その目を軽く見開く。
「――3倍。僕の身体能力があと3倍上がれば、今の腑抜けた僕でも殺れる可能性がある。それが身体能力差の最低倍率だね」
「ふーん、そう。なら、私の貴重な魔力を使ってあんたの身体能力を3倍まで上げてあげるわ。この状態なら、あんたが1人あの守護者に斬りかかっても、そんなに邪魔はしてこないでしょうし」
キベリアはそう言うと、自分の左手を響斬へと向けた。
「8の生命、彼の者の身体を活性化させる」
キベリアの左手から放たれた黒い光が響斬の体を包み込む。響斬は自身の身体から力が湧き上がってくるのを感じた。
「きっかり3倍、あんたの身体能力を上げたわ。私は後方からチビチビ攻撃しとくから、行って来なさい」
「ありがとう。ところで1つ思ったんだけど・・・・・・最初から僕の身体能力上げといてくれればよかったんじゃないかい?」
響斬が最もな疑問をキベリアにぶつけた。するとキベリアは心底嫌そうな顔を浮かべた。
「はあ? 何で私の魔力を最初っからあんたにやらなきゃいけないのよ。今はあの光導姫と守護者どもに腹立ったから、特別に魔法を掛けてあげただけよ」
「わーお、理由がひどい・・・・・なっ!」
響斬はそう言葉を返すと、刀を右手で持ちながら骸骨兵と戦っている光導姫と守護者の方へと駆けて行った。
「我流、剣術。『臥斬』」
そして響斬は骸骨兵たちと戦っている刀時の背後から、低姿勢から右の逆袈裟の剣撃を放った。
「ッ!?」
背後からの殺気に気がついた刀時は咄嗟に体を反転させて響斬の一撃を刀で防いだ。
「剱原さん!? 待ってください私も援護に!」
「手出しは無用だ風音ちゃん! この闇人のレベルはたかが知れてる! 俺1人でも対処は可能だ!」
骸骨兵を捌きながら、刀時の方に合流してこようとする風音に、刀時はそう声を張り上げる。そんな刀時に響斬は軽い笑みを浮かべながら、こう言葉を放った。
「言ってくれるね。確かに今のぼかぁたかが以下のレベルだけど・・・・・・・・こいつは戦いだ。舐めてると何が起こるか分からないぜ?」
「ご忠告、どうもありがとうよッ!」
刀時は響斬の刀を弾くと、左足の蹴りを響斬に放った。しかし、響斬はその蹴りを読んでいたようにその蹴りを回避する。
「全く、古流はやっぱり足癖が悪いな。まあ、僕も人の事は言えないけど」
「・・・・・・あんたさっきから色々と気になること言ってるが・・・・・・・・・・って、やっぱ邪魔だなこいつら!」
自分に襲いかかって来る骸骨兵を斬り伏せながら、刀時はそう愚痴をこぼす。一瞬骸骨兵たちがやって来た山の上部を見てみると、骸骨兵たちはまだまだこちらへと向かってくる。最悪だなと刀時は思った。




