第544話 歌姫オンステージ6(3)
「『侍』、『騎士』、もう1度突撃するぞ。『巫女』、『歌姫』、『呪術師』は今度はサポートを頼む。この人数差、加えてあの男・・・・・恐らく闇人だろうが、奴はそれ程強くはない。この攻防でキベリアとあの男の闇人を浄化し、レイゼロールを追う」
「2度もリーダー面しないでよ。まあ、作戦に異論はないから従ってあげるけど」
アイティレの指示に真夏だけは相変わらず不服そうな顔を浮かべたが、結局はアイティレの指示に頷いた。もちろん他の4人は先ほどと同様アイティレの指示にすぐに了解の意を示す。
(・・・・・・本気でどうする? さっきみたいに騎士を召喚したところで、オチは見えてる。それこそさっきと同じよ。ただただ、魔力が減っていくだけ。くそ・・・・・・・せめて、せめて人数差がもう少しマシになれば――)
キベリアが内心そう思考していた、そんな時だった。
ザッザッザッザッ、と何かが歩いて来るような音が聞こえて来た。
「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」
その場にいた全員が音のする方向に顔を向ける。音は釜臥山の上の方向から聞こえて来る。
そして月明かりがその音の発生源――レイゼロールによって創造された無数の闇色の骸骨兵の姿を明らかにさせる。骸骨兵たちは光導姫や守護者たち、キベリアや響斬の方に近づいて来るにつれ、ケタケタとした歯を鳴らすような不快な音を響かせた。
「ッ!? あれは・・・・・!」
「レイゼロール様の造兵・・・・・・・・・! さっすがレイゼロール様だわ。あの無茶苦茶な見た目詐欺ゴリラとは違って、部下思い・・・・・!」
その骸骨兵を1度見た事があり知っている光司と、元々骸骨兵の事を知っていたキベリアが1番に反応を示す。なお、キベリアの言葉を聞いていた響斬は「いや、キベリアくん。安心からだろうけど、今きみマジでヤバい言葉口走ってるぜ・・・・?」と言って、血の気の引いたような顔を浮かべていた。
「皆さん! あれはレイゼロールの召喚する闇のモノです! 僕は前回見たことがあります!」
「ちっ、レイゼロールめ・・・・・・・・! 妨害をして来たか!」
光司は仲間たちに骸骨兵の正体を伝える。光司から骸骨兵の正体を聞いたアイティレは注意を骸骨兵たちの方に向けた。
「!」
敵の姿を視認した骸骨兵たちは(目がないのに視認とは表現としては正しくはないかもしれないが)、各々武器に明確な殺意を乗せながら、アイティレたちに襲い掛かっていった。
「はあ!? 何なのよこいつら! 何かいい感じの見た目してるのが腹立つ! ええい、邪魔よ雑魚ども!」
「キレるところそこかよ!? ったく、やっぱりお前はよくわからねえな榊原!」
襲いかかって来る骸骨兵たちに対処するために、真夏は呪符を飛ばし、刀時は刀を振う。そんな2人に続くように、残りの者たちも迎撃行動に移った。
「どけ、貴様らに構っている暇はない!」
「第1式札から第10式札、光の矢と化す!」
「攻撃の歌――!」
「はあああああッ!」
アイティレの浄化の力を宿した銃弾が、風音の10条の光線が、ソニアの不可視の衝撃を対象の敵に与える歌が、光司の斬撃が骸骨兵たちを屠っていく。
「って、こいつら見た目雑魚の癖にしぶとっ!? 中々死なないだけど!」
「つーか、普通に1体1体まあまあ強いのもあるな! かーっ、厄介な事この上ねえ!」
だが真夏や刀時が愚痴ったように、この骸骨兵は見た目の割には1体1体がかなり硬く強い。どこぞの怪人は、レイゼロールとの戦いの時にこの骸骨兵を文字通り雑魚のように処理していったが、それはあの怪人野郎が少しおかしかっただけである。
「よし、これなら・・・・・・・・多少は私たちが生き残れるっていう、勝ちの目が出てきたわ」
「ああ、そうだね。ぶっちゃけ、この援軍がなかったら僕ら浄化されてただろうね。やっぱり、シェルディア様の言った事は無茶だったなー・・・・・」
1体1体が強固な骸骨兵の軍団。その登場により、光導姫と守護者のロックが外れたキベリアと響斬は、とりあえずホッと一息ついた。




