第542話 歌姫オンステージ6(1)
「4の氷、氷弾へと変化する!」
自分に近づいて来るアイティレと光司に向かって、キベリアは氷の弾丸を複数発射した。
「私に氷を使うか。だが・・・・・!」
アイティレは自分に向かって来る氷の弾丸を両手の銃で迎撃した。弾丸と氷弾は激突し、それぞれ軌道が逸れていく。
「これくらい・・・・・・・・!」
光司も自分の剣で氷弾を迎撃していく。2人とも駆けながら氷弾を迎撃しているので、キベリアとの距離は更に縮まっていった。
「ちっ、行きなさい!」
キベリアは箒に乗って距離を取りながら、鋼鉄の飛竜を2人へと差し向けた。鋼鉄の飛竜は金属が軋むような鳴き声を上げながら、アイティレと光司へと襲い掛かった。
「無駄だ。氷でないのならば――」
飛竜が鉄の顎を開ける。アイティレか光司を食い千切ろうという魂胆だろう。そんな飛竜に向かって、アイティレはあえて一歩を踏み出した。
鋼鉄の飛竜の顎がアイティレから半径1メートル以内の距離に入る。
その瞬間、鉄の飛竜は何の前触れもなく凍った。
「ッ!?」
「私の距離に入ったモノは全て凍る。仲間の闇人から聞いていなかったのか?」
驚くような表情を浮かべるキベリア。アイティレはチャンスとばかりにキベリアに銃撃を行う。
「聞いてないわよ・・・・・!」
キベリアは銃撃から逃れるために、箒を縦横無尽に踊らせた。キベリアの巧みな箒捌きもあり、銃弾はキベリアの肉体には当たらない。しかし、このままではジリ貧だ。
(全くあの飛竜創るのにけっこう魔力使ったっていうのに・・・・・・・・! 響斬の方は・・・・・・・・ダメね、当たり前だけど、あの守護者の相手で精一杯って感じだわ)
銃弾を空中で避けながらキベリアはチラリと響斬の方に視線を向ける。響斬はかなり劣勢といった感じで、変わらずに和装の守護者の相手をしていた。正直、10秒くらいでやられると思っていたので、かなり粘っている方だろう。
「はああっ!」
「ッ、邪魔よ!」
キベリアがアイティレの銃撃を必死に回避していると、光司が跳躍してキベリアへと斬りかかってきた。キベリアは光司の斬撃を紙一重で避けると、右足で蹴りを1発光司にお見舞いした。しかし、光司はキベリアの蹴りを左腕で受け止める。そのためダメージをほとんど受けずに光司は、地面へと落下していった。
「第1式札から第8式札、光の矢と化す!」
「攻撃の歌――」
「爆呪符、散!」
キベリアが光司に蹴りを防がれた次の瞬間、キベリアに向かって8条の光線が、不可視の衝撃を与える歌が、6枚の呪符が突如として飛来した。
「なっ・・・・・・!?」
その攻撃にキベリアの表情が驚愕と焦燥に歪む。その攻撃を行なって来たのは、騎士や鳥たちに相手をさせていた3人の光導姫だ。まさか、自分が召喚したモノたちがもうやられたというのか。
「9の闇、全てを飲み込む暗穴へと変化する!」
キベリアは反射的に右手を前方に突き出し魔法を使った。キベリアの右手を基点として、人が1人収まるようなサイズの暗穴が出現する。その暗穴は、8条の光の光線も、不可視の衝撃も、6枚の呪符も全てを吸い込み飲み込んだ。




