表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
541/2051

第541話 歌姫オンステージ5(5)

「1の炎、妖鳥へと変化する。あなたたちも行きなさい」

 キベリアは火で出来た鳥を作り出し、その鳥を6人の方へと突撃させた。そしてそれと同時に、3体の騎士に号令を出す。炎の騎士と水の騎士は火の鳥に続くように、光導姫たちへと突撃していった。雷の騎士はその後方から雷の矢を放つ。

「ッ! 全員散開――!」

「する必要はないよ、『提督』さん♪」

 アイティレが全員に指示を飛ばそうとした時だった。ソニアが仲間を守るように足を一歩前に踏み出した。

守りの歌(イージスソング)――」

 まるでアイドルの衣装のような服装に身を包んだソニア。そしてソニアはそう呟くと、歌を歌い始めた。

「歌・・・・・?」

 そのソニアの行為に響斬は疑問から眉を寄せた。はっきり言って、なぜ急に歌い出したのか意味が分からなかったからだ。だが、響斬はすぐにソニアの行為の意味を知る事になる。

 キベリアが突撃させた火の鳥や、炎と水の騎士の攻撃がソニアの前方の空間に弾かれたからだ。そう、まるでそこに見えない壁があるかのように。

「ッ!? 攻撃が通らない? バリアか!」

 響斬は驚愕したような声を挙げた。どういう理屈か知らないが、状況から考えるに、あの光導姫が歌った事により見えない障壁のようなものが展開されたと考えるべきだ。

「感謝するぞ『歌姫』。各自、今のうちに準備を整えろ。私と『侍』と『騎士』は、キベリアに近接戦を仕掛けに行く。『歌姫』、『巫女』、『呪術師』はあの3体の騎士たちを抑えてくれ。『歌姫』の歌が途切れ次第、行動を開始する」

 アイティレが全員に聞こえるようにそう指示を飛ばした。アイティレが指示を出したのは咄嗟の事だったが、他の5人はその指示に理解を示した。

「分かったわ」

「あんたに指示されて動くのは癪だけど、了解よ」

「オーライ、行けるかい光司っち?」

「大丈夫です。キベリアとは前回戦いました。攻撃のパターンは、ある程度分かっているつもりですから」

 風音、真夏、刀時、光司は言葉を返すが、まだ歌を歌っていたソニアだけは言葉を返す事が出来なかったので、コクリと首を盾に振っただけだった。

「〜〜♪ ごめん、障壁解けるよ!」

「了解した。各自行動に移れ!」

 ソニアの歌が終わった。それが意味するのは見えない障壁が解除されたという事だ。

 必然、今まで障壁によって阻まれていた、火の鳥や騎士たちの攻撃が光導姫と守護者たちを襲う。

「式札1番から5番、寄りて光の女神に捧ぐ奉納刀と化す!」

「はっ、呪ってやるわ!」

攻撃の歌(ストライクソング)――!」

 しかし、その攻撃には3人の光導姫が対応した。水の騎士には刀を持った風音が対応し、中距離にいる雷の騎士には真夏が呪符を飛ばす。そして、炎の騎士と火の鳥には、ソニアが先ほどとは違う歌を歌って対応した。ソニアの歌が響くと、火の鳥と騎士は突如としてその場から吹き飛ばされた。

「突撃するぞ!」 

 その隙にアイティレ、刀時、光司がキベリアと響斬の方へと向かって来た。

「6の鋼、鉄の飛竜へと変化する。響斬!」

「分かってる! でも止めれても1人だぜ!」

 両手の銃を撃ちながら距離を詰めて来るアイティレの攻撃から身を守るように、キベリアが新たな魔法を行使する。すると、キベリアを守るように鋼の飛竜が出現し、その翼でキベリアに飛来した全ての弾丸を弾いた。

 一方、キベリアに名前を呼ばれた響斬はキベリアの意図を理解したように叫ぶと、刀を鞘に納めながらアイティレたちの方に向かってダッシュした。ちなみに、今の響斬はゴム草履ではなく普通の靴を履いているので、足回りに不安はない。

 ダッシュした響斬はその勢いのままに、鞘から刀を抜刀すると、向かって来る3人の内の1人、刀時へと斬りかかった。

「っ!? 俺に来るかよ!」

「悪いね、まだ君が1番やりやすそうだ!」

 響斬に刀で攻撃された刀時は、自身も鞘から刀を引き抜き響斬の刀を受けた。響斬がまだ止められる可能性があるとすれば、自分と同じ得物を使う刀時しかいないと、響斬は考えたからだ。

「剱原さん!?」

「光司っち、アイティレちゃん! 俺の事はいいから、キベリアを狙え! 今ならあの鋼の飛竜さえ何とかすれば近接戦に持ち込める! そうなりゃ、こっちの勝ちだ!」

 光司の心配するような声に刀時はそう指示を出す。鍔迫り合ってみた感じ、この闇人らしき人物の膂力はそれ程でもない。いや、下手をすると殆ど一般の人間と同じように感じられた。これならば、刀時1人でも余裕だと刀時は考えたのだ。 

「分かった。『騎士』、そういう事だ。私たちは変わらずこのままキベリアに突撃する」

「ッ・・・・はい!」

 刀時の指示に頷いたアイティレは一瞬止めていた足を再び動かす。光司も刀時とアイティレの言葉に従い、再びキベリアに向かって走り始めた。

「近接型の最上位が2人・・・・・・・・さあ、残りの魔力でどう捌こうかしら」

 自分に向かって来るアイティレと光司に視線を向けながら、キベリアは少しヤケクソ気味な笑みを浮かべる。もうけっこう魔力を使っているので、正直かなりマズイ状況だからだ。

 だが、何とかしなければならない。でなければ、自分はここで浄化される。

 ――こうして釜臥山での戦いは始まった。しかし、今この場にいる者はまだ誰も気がついてはいなかった。

 レイゼロールの創造した、闇の骸骨兵の軍団。

 圧倒的に自在な闇の力を振るう、正体不明・目的不明の怪人。

 その2つの存在が近づいている事に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ