第540話 歌姫オンステージ5(4)
「来なさい、私の箒」
キベリアが虚空に手を伸ばす。そうすると、突如虚空から箒が出現した。キベリアの魔法、その10『空間』に普段保存されている箒を、異空間から呼び出したのだ。
「こっちのキベリアくんも随分久しぶりだ」
「無駄口叩く暇なんてないわよ、響斬。こっからは死ぬ気で気張りなさい」
変化したキベリアの姿を見た響斬が、肩にかけていた細長い黒のケースから刀を取り出しながらそう言った。そんな響斬の言葉に、キベリアはそう言葉を返す。
そしてその数秒後、2人の前に6人の男女が姿を現した。
「っ、キベリア・・・・・!? それにもう1人・・・・・・・!?」
「最上位闇人か・・・・・・・・・!」
「へえ、レイゼロールだけじゃないのね! いいわ、私が浄化してあげる!」
「頼もしいわね真夏♪ じゃあ、レイゼロール戦の前にライブを始めましょうか!」
「あちゃー、ここで最上位闇人かよ。後1人は・・・・・ただの闇人か? 見たところ刀持ってるが・・・・・・」
「ラルバ様の指令はレイゼロールの行動を阻害し、レイゼロールが何か目的物を得るような行動をすれば、その目的物を奪取すること・・・・・・・・足止めならば、押し通る!」
その6人の光導姫と守護者――風音、アイティレ、真夏、ソニア、刀時、光司はキベリアと響斬の2人にそれぞれの反応を示した。いま日本にいる光導十姫と守護十聖の全員という、光サイドの最高戦力。その事実は、それだけソレイユとラルバが本気だという事を示していた。
「うへえ、6人もいる・・・・・・・・しかも全員クソ強いの雰囲気でわかるし・・・・・」
「これまたゾロゾロと来ちゃって。・・・・・・想定より少し多いけど、やるしかないわね」
キベリアはため息を吐きながらも、その6人に対抗するべく魔法を行使した。
「1の炎、焚べゆく番人へと変化する。2の水、沈みし貫者へと変化する。3の雷、猛る弓士へと変化する」
キベリアがそう呟くと、炎、水、雷で体が構成された騎士が出現した。炎の騎士は炎の剣を、水の騎士は水の槍を、雷の騎士は雷の弓をそれぞれ携えている。
「あんたは出来るだけ私を守るのよ響斬。どうせ浄化されるなら、私の盾になって逝きなさい」
「わーお・・・・・・キベリアくん、言ってる事中々えげつないぜ?」
響斬は軽く泣きそうになりながらも、キベリアの言う通り刀を持ちながらキベリアの前方に立った。キベリアはその闇の性質上、近接戦があまり得意ではない。ゆえに、キベリアが近接戦に陥るような事があれば、響斬たちの負けは確定的となるからだ。その事態を出来るだけ起こさないようにするためには、響斬が盾になるような形で戦う方がまだいい。キベリアと響斬はその事を理解していた。




