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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
535/2051

第535話 歌姫オンステージ4(4)

「にしても・・・・・・・・・このアドレスどうすっかな。歌姫サマは絶対連絡して来いって言ってたし、暁理も連絡してあげろとか言ってたが・・・・・・・・ぶっちゃけ、面倒い予感しかしないから、連絡したくないんだよな」

 影人はウエストポーチに入れていた紙を取り出しながら、ため息を吐く。普通、影人と同年代の男子ならば、世界の歌姫であり美少女と名高いソニアから連絡して来てほしいと言われれば、興奮するか喜ぶか何かを期待する所だが、そこは我らが誇る前髪野朗である。前髪は本当に面倒くさそうな顔をしながら、嫌そうな声を漏らした。

『――影人、すみませんが緊急の要件があります』

「ん・・・・・・・? 何だよ、ソレイユ?」

 そんな時だった、影人の脳内にソレイユのどこか緊張したような声が響く。そんなソレイユの言葉に影人は肉声でそう聞いた。

『・・・・・レイゼロールが日本に出現しました』 

「・・・・・・・・・レイゼロールが? そりゃまた何でだ? まさか、また俺を釣るためか?」

 レイゼロールが日本に出現した。確かにそれは緊急の要件だろう。しかし、レイゼロールが日本に現れた肝心のその理由が影人には分からなかった。考えられる可能性としては、いま自分が言ったように、またスプリガンを釣るため。それくらいしか思い浮かばない。

『それは・・・・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ですが、レイゼロールが気配の遮断を解いてまで、日本に出現したのには何か目的があるはずです。そうですね、考えられる可能性としては・・・・・・・・・何か目的の物がそこにあるとか。それくらいでしょうか?」

「ふーん・・・・・・・・・・・・なるほどな」

 何か隠してるか、嘘をついてるな。ソレイユの念話を聞いた影人は直感的にそう思った。色々と態度が白々しい気がしたからだ。

『一応、あなたにお願いする事は、レイゼロールの目的の阻害です。先ほど私が言ったような事が第一に考えられるので、その場合はレイゼロールが得ようとしている目的物を先に確保、もしくは奪取してください。なお、先に現地に転移させた、『巫女』、『提督』、『呪術師』、『歌姫』にも同様の事を伝えています』

「はっ、『歌姫』ね・・・・・ちょうどいい、紙でも叩き返してやるか」

 ソレイユから聞いた光導姫名の中に、今日の昼に会った少女の光導姫名があったので、そんな冗談を言った影人だったが、影人が『歌姫』と出会った事をまだ知らないソレイユは、『? どういう意味ですか?』と聞き返して来た。

「まあ、また今度話してやるよ。いま家だからちょい待ってくれ。準備出来たら、また念話するからよ」

『わかりました』

 ソレイユはそう言って、念話を一旦終了させた。影人はすぐさま机の引き出しに入れていた、黒い宝石のついたペンデュラムを取り出しズボンのポケットに入れた。実は今日外出する時に、うっかりと忘れていたのだ。一応、いつ仕事が来ないとも限らない影人からしてみれば、こういううっかりは許されないのだが、影人も人間だ。祭りに行くとワクワクしていた日には、忘れる事もある。まあ、普段はこういうミスはしないのだが。

「よう、イヴ。話しかけて早々だが、仕事だぜ」

『ああん? ちっ、面倒くせえな。俺は暴れられるんだろうな?』

 ペンデュラムを持った事で、イヴとのリンクが構築された影人はイヴにそう話しかける。イヴはいつも通り影人に悪態をつきながらも、そんな事を確認してきた。

「どうだかな。まあ、色々とありそうな予感はするが・・・・・・戦闘にはなるだろうな。だが・・・・・・俺は自分の仕事をするだけだ」

 影人はどこまでも無感情にそう呟く。ソレイユが何を隠していようが、嘘をついていようが関係ない。自分はただ言われた仕事をするだけだ。そこに詮索は、今は必要ない。

『けっ、まるでワーカーホリックだな』

「違うな、イヴ。俺はプロなだけだ。・・・・・さあ、ちょいと久しぶりな暗躍をやりに行くか」

 そう格好をつけながら、影人は靴を履いて家を出た。

 数秒後、影人は光に包まれどこかへと姿を消した。

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