第533話 歌姫オンステージ4(2)
「ふふっ、まあそうね。レイゼロールの気配が漏れたという事は、ソレイユとラルバが光導姫と守護者を恐山に送るという事。なら、必然そこに行けば私たちも戦闘に巻き込まれる事になる。まあ、私も面倒な戦闘は嫌だけど・・・・・・・それ以上に、面白そうな予感がするのよ」
シェルディアはキベリアの指摘を認めつつ、意味深な笑みを浮かべた。シェルディアの言う面白そうな予感、それは即ちスプリガンが現れるかもしれないというものだ。いや、もしかするとこの前レイゼロールを襲ったという、神殺しの大鎌を持つ謎の黒フードも現れるかもしれない。シェルディアはそれを期待しているのだ。
「とにかく、あなたたちも一緒に行くのよ。これはもう決めた事。ちょうどいいじゃない響斬。あなたいま修行しなおしてるんでしょ? 生身で光導姫と守護者と戦えばきっといい修行になるわよ。キベリアは問答無用よ」
ニコニコとした顔でそんな事を言ったシェルディア。シェルディアからそう言われた響斬とキベリアは、全てを諦めたような顔を浮かべていた。
「うーん、たぶん僕今日死ぬかも・・・・・・・キベリアくん、悪いけど骨は拾ってくれ・・・・・」
「私たちくらい長く生きてる闇人は、浄化されれば骨も残らないわよ・・・・・・・・ああ、世界はやっぱり理不尽だわ・・・・・」
2人の最上位闇人はお互いに言葉を交わし合うと、渋々とした感じで戦場に向かう用意に取り掛かった。
「うんうん、それでいいのよ。それにしても、昔に恐山に行っておいてよかったわ。じゃなきゃ、色々と面倒だったし、あの土地の性質の事も知らなかっただろうから」
2人の様子を見たシェルディアは、気分が良さそうな顔になった。
――こうして数分後、シェルディアの転移により3人は恐山に到着した。
「ッ!? これはレイゼロールの気配・・・・・!?」
神界、その自らのプライベートスペースにソレイユの驚愕したような声が響く。だが、それも無理はない事だろう。普段は気配を遮断して活動しているはずのレイゼロールの気配が突如として地上の世界に出現したのを感じたからだ。
(いったいどういう事? レイゼロールの近くに闇奴の気配はない。レイゼロールの気配が出現した場所は・・・・・・・・日本の青森県? もっと詳細な地名情報は・・・・・・恐山と呼ばれる霊場、その中の山の1つ、釜臥山・・・・・・・・・)
ソレイユは自分の目の前に、日本の地図をウインドウとして出現させながら、気配の正確な位置を探っていく。その結果、レイゼロールが出現した場所は、日本の青森県にある恐山山地の釜臥山という事が分かった。




