第532話 歌姫オンステージ4(1)
「ふむ、なるほどな・・・・・・」
この世界のどこか、周囲が暗闇に包まれた場所。石の玉座に腰掛けていたレイゼロールは、今しがた虚空より出現した手紙に目を落としながら、そう呟いた。
(響斬が我の探し物の情報を掴み、それをシェルディア経緯で伝えてきたという事か)
シェルディアの手紙に記されていたのは、日本に戻った響斬が得たというカケラに関する情報だった。響斬が言うには、あくまで噂レベルという事らしいが、噂レベルでもレイゼロールにとっては十分な情報であった。
(場所は日本の北にある霊場「恐山」。今夜にでも確かめに行くか。冥や殺花は気配の問題があるため、行くのは我1人でいいだろう)
レイゼロールは手紙を畳みながらそう考える。レイゼロールは気配を遮断する事が出来るが、力を解放した冥や殺花は、再び力を封印しなければ外に出た場合気配が漏れてしまう。それに回収作業だけならば、戦闘になる事も恐らくはないだろう。
(懸念があるとすれば、この前に我を襲って来たフェルフィズの大鎌を持つ謎の人物、もしくはスプリガンが出現する可能性がある事だが・・・・・・・・・その時はその時だ)
その2人がレイゼロールが気配を遮断している状態でも、レイゼロールの事を感知出来るのかは分からないが、出現する可能性もなくは無い。
「・・・・・・響斬が伝えてくれた場所にカケラがあれば、それで2個目か。それでも・・・・・・・・まだ遠いな」
レイゼロールはカケラがある事を願いながらも、ため息を吐いた。
「! ふふっ、2人ともレイゼロールが恐山に現れたわ。さあ、私たちも行きましょうか」
午後8時を過ぎた辺りの時間、自宅で優雅に本を読んでいたシェルディアは突如として、そんな事を言葉に放った。
「うへえ・・・・・シェルディア様、さっきも言ったように、今のぼかぁただの人間とほとんど変わらないんですけど・・・・・・・・・・それでも行かなきゃダメですかね?」
シェルディア宅のテレビの前で、シマシマパンツを履いた白いぬいぐるみと一緒に座っていた響斬が、困ったような声音でそう言った。昼ごろにシェルディア宅を訪れた響斬だったが、響斬は昼からずっとシェルディア宅にいた。その理由は、今シェルディアが言った事が原因だ。
「あのですね、シェルディア様。私は勇気を持って提言しますが、私たちが行く意味あるんですか? 確かに昼ごろに仰っていた通り、レイゼロール様の気配は恐山に入った事で解かれたんでしょう。レイゼロール様の気配は私も感じましたし・・・・・・・・つまり何が言いたいかと言うと、私たち行けば戦闘する羽目になりますよ?」
リビングの隅の机で魔導書を解読していたキベリアは、顔を上げて難しいような面倒くさそうな表情を浮かべていた。なお、シェルディア宅には気配遮断の結界が展開されているため、キベリアはシェルディアから貰った一時的に力を封印する腕輪を外していた。そのため、レイゼロールの気配を感じる事が出来たのだ。




