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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第518話 歌姫オンステージ1(4)

「いや・・・・・・・・とりあえず、俺は不審者じゃねえ。それだけだ」

 思った以上に大声を出してしまった影人は、若干バツが悪そうにそう言った。

「いや、それはもちろん分かってるけど・・・・・・・・まあ、いいや。影人が変なのは別にいつもの事だし」

「・・・・・お前の俺に対する評価には、断固として異議を唱えるぜ」

「却下させてもらうよ。それより、入るならそろそろ入ろう。時間は有限だしね」

 暁理は影人の異議を秒で拒否すると、右手の親指で小学校を指差した。

「ひでえ・・・・・・・・ま、そうだな。無駄な言い合いしてんのも時間の無駄だ。入るか」

 暁理の言葉に素直に頷いた影人は、およそ5年ぶりに自分が通っていた小学校の校門を潜った。












「この光景も久しぶりだな・・・・・・・・・公立の小学校だから、ほとんど何も変わってねえ」

 小学校内に足を踏み入れた影人は、感慨深そうに辺りを見回した。

 正確には今日は夏祭りの日なので、グラウンドや中庭には小さな露店が出ているし、校舎も飾り付けされているため、普通の学校風景とは違う。だが、何も変わっていない。この学校に通っていた影人には、その事が分かった。

「懐かしい感じ? ふふっ、まあそうだよね。卒業した小学校なんて、普通は訪れなんてしないものだし」

「まあな・・・・・・おっ、フランクフルトあるぜ暁理。やっぱ祭りといえばこれだよな」 

 小学校の中庭に、フランクフルトを売っている露店を見つけた影人は、どこか嬉しそうにそう言った。そういえば、フランクフルトの店は影人が通っていた頃から中庭に出ていたな、と影人は思い出していた。

「いや、別にコンビニにも売ってるでしょ。でも、お祭りで食べる物は、何か違うよね。せっかくだから、僕も1つ食べよっと」

「言っちまえば気分の問題だろうが、気分は大事だからな。すみません、フランクフルト2つください」

 影人と暁理は、中年くらいの女性がフランクフルトを焼いている露店に近づいた。影人が右の指を2本立ててそう伝えると、女性は顔を上げた。

「はいよ、まいどあり! 2本で600円ね!」

 女性は笑顔で金額を伝えて来た。影人と暁理は、それぞれ自分のサイフから300円を取り出すと、それを女性に手渡した。

「あざっす。相変わらず美味そうだ」

「ん? 何だいお兄さん、その言い方から見るにここの卒業生かい?」

 影人がフランクフルトを受け取りそう呟くと、女性が話しかけて来た。影人は女性の問いかけに、「あ、はい」と答えた。

「5年振りに来たんですけど、全然変わってないなと思って。もちろんいい意味でです。このフランクフルトも絶対美味いってのが、すぐ分かりますよ」

「お兄さん褒め上手だね! そうかいそうかい、やっぱりここの小学校の卒業生か。なら、久しぶりに楽しんでいっておくれ! 私もこのお祭り参加して2〜3年くらいだけど、この祭りは地域の人間と子供たちの笑い声がよく響く、いい祭りだよ」

 女性はなぜか嬉しそうに笑う。中々大きな声だ。明るくて元気な女性にそう言われた影人は、フッと笑みを浮かべた。

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