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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第515話 歌姫オンステージ1(1)

「そういや毎年この時期は、あそこは夏祭りの日だったな・・・・・・・」

 8月12日日曜日、午前11時。自宅の自分の部屋でテレビゲームに興じていた影人は、ふとそんな事を思い出した。

 あそこ、というのは影人が通っていた小学校の事だ。ここから歩いて30分くらいした所に、当時影人が通っていた小学校があるのだが、その小学校では毎年8月のお盆の時期の手前の土日になると、校舎を開放して小さな夏祭りが行われていた。基本的に地域の人間は出入り自由で、影人も小学校時代は何度か行って遊んだものだ。

「確か、ちょっとした屋台が出てたりして、けっこう食べ物もあったり、射的とかおみくじとかもあったりして、まあまあ楽しかったな・・・・・」 

 小学校時代の愉快な記憶を思い出す。屋台が出ているといっても規模は本当にそんなに大きくはないし、屋台を出しているのも小学生の保護者たちだった。だが、平日ではない校舎中を探検したり、屋台のフランクフルトを食べたり、ミニゲームなどに興じたのは、いい思い出だ。

「・・・・・・・・・・今でもやってんのかな? ちょっと調べてみるか」

 影人はゲームを一旦中断し、スマホで自分の通っていた小学校の名前を検索した。すると1番上にその小学校のホームページが表示される。影人はそのホームページにアクセスした。

「おっ、まだやってんのか。ええと、最終日は今日で夕方の5時まで。相変わらず、地元の人間なら誰でも入れるみたいだな」

 サイトを調べてみると、どうやらあの小さな夏祭りはまだやっているようだ。影人は時間とサイフの中身を確認した。時間はまだたっぷりあるし、サイフにもまだ3000円くらいは入っている。今日は特に予定はないし、行ってみてもいいかもしれない。

「そうと決まれば善は急げだな」

 影人はゲームの電源を切ると、寝巻きから着替えた。格好はいつもの半袖に短パンだ。いつもの外出用のウエストポーチに、タオルやらサイフやらの必要な物を詰めていく。後は、水筒くらいか。 

 影人はリビングに向かい、棚から水筒を取り出すと冷蔵庫を開けた。冷えた麦茶のペットボトルを取り出すと、影人はそれを水筒に注いだ。

「・・・・・・・また、どこかに出かけるの?」

 すると、リビングのイスに腰掛けていた制服姿の穂乃影が影人にそう話しかけてきた。影人は穂乃影に「ああ、まあな」と返すと、こう言葉を続けた。

「俺たちが通ってた小学校の夏祭り覚えてるか? ちょうど今日やってるみたいでよ。久しぶりに行ってみようかと思ってな。別に地元の人間なら誰でも入れるとこも変わってないみたいだし」

「そう。まだあのお祭りやってるんだ・・・・・・相変わらずあなたが暇人みたいで何より。でも見た目不審者のあなたは、小学校に入れないんじゃない?」

「誰が見た目不審者だ。ったく、お前といいあいつといい・・・・・・・・別に俺の見た目はちょい前髪長いくらいだろ。つーか、お前今日も学校か? 部活もやってないのに、よくそんな学校に行くもんだな」

 妹の息を吐くような毒舌に影人はため息を吐きながらそう言葉を返す。全く、妹もソレイユもよく自分の見た目にケチをつける奴らである。

「・・・・・・私は、あなたと違って色々と忙しいの」

「そうかい。んじゃ、暇人らしい俺はさっさと行ってくるよ。何か土産でも買ってきてやろうか?」

 穂乃影のどこかムスッとしたような言葉に、影人は水筒の蓋を閉めながらそう言葉を紡いだ。ここ最近、穂乃影は学校によく足を運んでいる。理由は家にいるより学校で勉強する方がはかどるから、らしい。ちょうど今の時期は陽華や明夜も研修を受けているが、まあ穂乃影とは関係がないだろうと影人は思っていた。

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