第509話 光導会議(後編)7
「・・・・・・・・提示はねえみたいだな。じゃあ、雇い主様。私は変わらずさっきの意見で」
「え、ええと・・・・・・あまり褒められた方法ではなかった事は確かですが、仕方がありませんね。私は多様性を尊重していますし・・・・・菲、あなたの意見は分かりました。あなたのその理由も、私は認めましょう」
ソレイユはため息を吐きながらも、菲の意見を認めた。菲の意見の方がソレイユにとって都合の良かった、という事実も確かにあるが、そうでなくともソレイユは菲のどのような意見と理由でも認めていた。それが、神だからだ。
「っ・・・・・・・!」
アイティレがギリッと奥歯を噛み締める中、ソレイユは会議の結果を全て纏め、報告した。
「では皆さんの意見の総評を述べます。スプリガンを敵と認定する意見4、スプリガンを敵と認定しない意見6。よって、光導姫側の意見は――」
ソレイユはそこで息を大きく吸うと、会議の結果を宣言した。
「――敵と認定しないものとします。これは厳正なる光導十姫の意見、論議の結果。光導姫の神ソレイユはこの結果を保証し認めます」
ソレイユは内心ホッと息を吐きながら、円卓に着く者たちを見回した。それぞれ、笑顔を浮かべていたり、普通の表情だったり、不機嫌そうな顔を浮かべているが、何はともあれ、これで影人が一方的に敵と認定される事はなくなった。
(ギリギリの戦いでしたが、何とかこの結果に落ち着いてよかったですね・・・・・・・・・これで、まだしばらく影人はこちら側からの妨害を気にせずに自由に動ける)
全くあの前髪少年には感謝してもらいたいものだ、とソレイユは本気半分、冗談半分で思いながら、言葉を放った。
「では、最重要議題の結果は決まりましたので、後は例年通りの会議といきましょうか」
ソレイユはニコリと笑みを浮かべる。他の光導姫たちも、それぞれ反応を示しながらも会議は続いていった。
――かくして、守護会議、光導会議、両会議の結果は決まった。この後、ラルバとソレイユはお互いの会議の結果を報告しあい、意見が分かれたため中間の意見の調整を行ったのだが、そこは両神の思惑が絡み合い、調整は難航した。しかし、長時間の調整の末、意見はこのようなものに決定された。
スプリガンが光導姫・守護者に再び攻撃を行ってこないまでは、光導姫・守護者側はスプリガンを敵と認定しない。また光導姫・守護者からスプリガンに攻撃を行なってはならない。攻撃をしてよいのは、スプリガンから攻撃を受けた場合のみ。
つまり、スプリガンが攻撃してこない間は、光導姫・守護者側はスプリガンを攻撃してはいけないし、敵と認定しないが、スプリガンが攻撃してきた場合は、敵と認定し、攻撃をしてもよいというわけだ。
今までとあまり変わらないように思えるが、これはソレイユとラルバの正式決定意見だ。光導姫と守護者はこの決定に従わなければならない。
こうして、スプリガンは自身から攻撃しない限り、今までと同じ立ち位置で活動出来る事が保証された。




