第506話 光導会議(後編)4
「ふふふふっ、いいねファレルナくん。君の意見は自身の感情に素直に寄ったものだ。自分に正直な意見というのは好ましいと思えるもの。では、そんな君に習って私も私の素直な意見を述べるとしよう。私の意見は、スプリガン何某を敵とは定めない意見だ。だって、そちらの方が色々と面白そうだろう?」
ファレルナの意見に耳を傾けていた、ランキング7位『芸術家』のロゼは、ファレルナの意見に拍手を送ると、そう自身の意見を宣言した。
「ッ! 『芸術家』、そんなふざけた理由の意見が通るとでも――!」
ロゼの言葉を聞いたアイティレが、思わず席から立ち上がり視線を厳しいものにした時、アイティレの右横の席からも声が上がった。
「ファレルナが信じるって言うなら、私もそのスプリガンって人を信じようかな♪ 聞いてた限りだと、そんなに悪い人でもなさそうだし」
「ッ、『歌姫』お前まで・・・・・・・!」
ランキング2位『歌姫』のソニアも、そんなファレルナとロゼの意見に追従するような意見を言った。ソニアの理由にも色々と思うところがあったのか、アイティレは今度は右横のソニアに厳しい視線を向けた。
「おやおや、何をそんなに憤る事があるんだい、アイティレくん? 例えどんな理由、意見だろうとこの場ではよしとなる。私たちは実力を以ってこの場にいるんだからね。そこに君が憤り否定するような権利はないんだよ。それとも何かい? 君にはスプリガンが敵認定をされないと困る理由でもあるのかい?」
「ぐっ、それは・・・・・・・!」
自分が秘密裏にしている核心に迫る問いに、流石のアイティレも言葉に詰まる。いや、それ以前にロゼの言う事はどこまでも正論なのだ。そういう事もあり、アイティレは言葉を続ける事が出来なかった。
「アイティレ、まずは着席を。そしてロゼの意見は正論です。この場に着く者の意見もその理由も、誰かが否定する事は出来ません。それは私も同じです」
「・・・・・・・・・・分かりました。取り乱してしまい、申し訳ありませんでした」
ソレイユの注意するような言葉に、アイティレは渋々といった感じで頷き、謝罪して席に再び腰を下ろした。
「ファレルナ、ロゼ、ソニア、意見をありがとうございます。これでスプリガンを敵と認定する意見は4、敵と認定しない意見は4とちょうど別れましたね。残るは2人ですね、では・・・・・風音はどのような意見ですか?」
ソレイユは3人に礼の言葉を述べると、風音に視線を向けてそう質問した。
「私の意見は・・・・・・・前にファレルナと話をした時から決まっています。私は、私も・・・・・・・・・・スプリガンを敵とは認定したくありません」
前回にファレルナが扇陣高校の生徒会室を訪れた時の事を思い出しながら、ランキング4位『巫女』の風音は凛とした顔を浮かべた。確かにスプリガンの敵対宣言を聞いた時は、ショックを受けた。だが、スプリガンは風音の命を救ってくれた恩人でもある。要は、陽華や明夜たちと同じだ。
(私は、私を助けてくれたスプリガンを敵だとは思いたくない。確かに、前は歩み寄ろうとして拒絶された。でもまだたった1回だ。たった1回拒絶されただけで、敵と認定するなんて、私はしたくない)
最高位のランカーにして、日本最強の光導姫である人物の意見としては、ほとんど私情全開だ。だが、これが風音の偽らざる本音。ファレルナに気づかされた風音の本当の気持ちだ。そして、この場で嘘をつけるほど、風音は大人ではなかった。




