第501話 光導会議(前編)5
「みなさん、お久しぶりです。みなさんと会える事を楽しみにしていました」
ゲートから現れた少女の1人――光導姫ランキング1位『聖女』にして、現代の聖女ことファレルナ・マリア・ミュルセールは慈母のような笑顔を浮かべて円卓に着く者たちにそう挨拶をした。
「ふーむ、こちらの世界に来るのもかなり久しぶりだが、やはり美しい世界だね。いや現実世界ももちろん美しいが、この暖かな光は唯一無二だ。いいね、創作意欲が湧いてくるよ」
もう1人のゲートから現れた少女は神界を見回しながら独り言を呟いていた。水色の長髪の一部分が白色に染められた、中々独特な髪色の少女だ。いわゆるメッシュという髪型で、服装は黄緑色のシャツにピタリとフィットするタイプのズボン、足元はスニーカーというものだったが、その服装は彼女のスタイルの良さを際立たせていた。
「はっ・・・・・・こりゃまた珍しい。まさか世界に名だたる聖女と芸術家が来るとはな。去年みたく欠席かと思ってたぜ」
新たな2人の少女の登場に、菲が意外そうにそう言った。他の光導姫たちも2人の登場には驚いたような表情を浮かべていたが、エルミナとメティだけは、「こんにちはだ、ファレルナ、ロゼ」、「おっ! 2人も来たのか! 後はソニアさえ来れば、全員集合だな!」とそんな反応を返していた。
「今年はどうしても出席しなければと思いまして。何とか日程を調整していただいて、会議に出席できる事になりました」
ファレルナが菲の言葉に変わらず笑顔でそう答えた。ファレルナは現代の聖女。そんなファレルナのスケジュールは多忙を極める。そのため去年は光導会議に出席できなかったが、今年は何とか無理を言って、ファレルナのお付きの修道女であるアンナに日程を調整してもらったのだ。
「ふふん、私は別にただの芸術の探求者なだけだよ菲くん。今年は色々と興味深そうな年だから、会議に出席してみようと思ってね」
「よく言うぜ。世界の芸術賞を総ナメにしてる奴がよ」
水色の髪の少女の言葉に、菲は呆れたようにため息を吐いた。この水色の髪の少女も、ファレルナと同じく有名人だ。主に絵画の作品で有名なこの少女は常人とは違うセンスの持ち主で、この年にして才能を全開させており、去年の主たる芸術賞の最優秀賞をいくつも受賞している。
「それにしても・・・・・・・・何だかこの調子だとソニアも来そうな予感がするね。といっても、もう会議開始の午後3時になってるけど」
「確かにな。この調子だと、『歌姫』が来てもおかしくはない」
驚きから立ち直った風音がスマホを見ながらそんな事を呟くと、隣の席のアイティレも風音の言葉に同意した。前回出席出来なかった3人の内の2人が来ているという事もあり、残る後1人ももしかしたらやって来るのではないかと思えてきたのだ。




