第492話 守護会議(後編)2
「それに関しては俺が答えるよエリア。実はこの2人はスプリガンと邂逅した事があるんだ」
エリアの疑問に答えたのはラルバだった。ラルバは刀時と光司がスプリガンに邂逅した事のある守護者である事、またそれに関するキベリア戦、冥・殺花戦について知っている範囲の情報を円卓に着く全員に伝えた。そして光司に関しては、恐らく最も多くスプリガンと邂逅した事のある人物であるだろうという事も。
「なるほど・・・・理解した。俺の意見を言わせてもらうなら、スプリガンという人物は敵だと認定しておいた方がいいと考える。確かに光導姫を助けたという事実もあるのだろうが、余りにもその要素が不確定だ。しかもこちらにも攻撃してくるという。ならば、敵と認定しておく方がこちらも動きやすい」
ラルバの話を聞いたエリアがランキング7位としての意見を述べた。その意見は客観的事実と戦場に赴く者の冷静な視点から述べられたものだった。
「・・・・・・・・・戦場において最も危険なのは、判断がつかないことだ。でなければ死ぬからな。スプリガンをもし敵と認定しない場合、光導姫、俺たち守護者はどう動けばいい? そこには迷いや一瞬の判断の遅れが生じる。そういった事が起きないようにするためには、敵と認定しておいた方が都合がいい。スプリガンを味方と仮定するには、リスクが多すぎる」
エリアの意見に続くようにランキング2位『傭兵』のハサンが静かな口調でそう発言する。ハサンもエリアと同じ意見のようだ。
「エリアとハサンの意見は分かった。2人とも、スプリガンを敵と認定する意見だな。ショットは今のところどっちつかずって感じか」
3人の意見を一旦ラルバが整理した。8人の内2人が敵とするのに賛成、1人が中間意見だ。
「刀時はどう思う? お前は実際にスプリガンと会った事もあり、かつスプリガンの力を目の当たりにしている貴重な奴だ。そんなお前の意見はどっちだ?」
「俺の意見ですか。俺の意見は、ぶっちゃけ敵と認定する派ですかね。敵対宣言の事もありますけど、スプリガンの目の冷たさは本物でした。ありゃ、いざという時はやる奴の目ですよ。あの目とスプリガンの力を見た時、俺は危険だと思いました。ショットの言うように、やり合わないならそれに越した事はないですけど、いつスプリガンが俺たちに本格的に牙を剥いてくるか分からない。ならリスクはありますが、敵と認定しとく方がいいと俺は思います」
ラルバに促され、ランキング3位『侍』の刀時は自身の意見を口に出した。敵対宣言という単語が出た辺りで光司以外の守護者たちは表情を変えた。実はラルバはスプリガンの敵対宣言の事をこの時点では話していなかった。ラルバは光司と刀時以外の守護者に向けて「その敵対宣言の事については、また後でちゃんと話す」と言った。今はとりあえずランカーたちの意見を聞くのが先という事もあるが、ラルバはにはもう1つ狙いがあるからだ。
「刀時の意見も分かった。これで認定派は3人だな。イヴァンと葬武はどんな意見だ?」
ラルバが今度はエリアの右横の黒髪の少年と、その右横の燻んだ銀髪の少年に言葉を掛けた。ラルバの問いかけに先に答えたのは、黒髪の少年の方だった。
「・・・・・・俺もそいつを敵とする事に賛成だ。冥を倒した程の実力なら、そいつは間違いなく強い。俺は強いそいつと戦いたい。なら、そいつが敵のほうが俺にとって都合がいい」
短めの黒髪に簡素な綿の服に綿のズボン。上は半袖に下のズボンは7分丈の長さ、肩には黒い上着を羽織ったランキング6位『天虎』は、他の守護者とは違った種類の意見を述べた。




