第486話 守護会議(前編)1
8月10日金曜日。遂に今日ラルバの元では守護会議、ソレイユの元では光導会議が開かれる日となった。
「さあてと、んじゃそろそろ行こうか光司っち」
「そうですね、剱原さん。もうあと10分で所定の時間になりますし」
現在の時刻は午後2時50分。会議に参加する刀時と光司は、刀時の実家の道場内にいた。刀時は私服の半纏、光司は風洛高校の制服姿である。ご丁寧に、光司は夏だというのに風洛高校のブレザーを羽織っていた。一応、会議なのでキッチリとした方がいいと感じたからだ。
守護会議が開かれるのは午後3時から。会議に参加する守護者たちはそれまでに、神界に行かなければならない。そして、顔見知りでお互い守護者ランキング10位以内の刀時と光司は、せっかくだから一緒に神界へ行こうという事になり、光司が刀時の家を尋ねたという形になったのだ。ちなみに、光司が刀時の家を訪ねたのは午後1時半くらいで、時間までは暇だからと刀時が言い、2人はこの道場で将棋をしていた。
「って、珍しく光司っち緊張してる? まあ、無理もないか。光司っち、今回初めて会議に出席するんだもんな」
「は、はい。僕がランキング10位になったのは、今年の3月でしたから。だから・・・・・・・剱原さんの言う通り、緊張しています」
道場の玄関で草履を履きながら、刀時がそんな事を聞く。流石に神界に行くのに素足はまずいからだ。そう言う事もあり、隣の光司も靴を履き直していた。
「別にそんなに気負わなくても大丈夫だと思うよ? 俺は会議に出席するのはこれで3回目だけど、周りの面子もほとんど変わってないし。中にはちょいと物騒な奴らもいるけど、基本的には無口だしね」
光司の緊張をほぐそうと、刀時が笑みを浮かべる。刀時は光司よりも先輩で、会議にも何度か出席した事があるが、基本的にあまり緊張はしてこなかった。
「ありがとうございます、剱原さん。僕に気を遣ってくれて。・・・・・でも、この緊張は責任の緊張でもあります。自分がランキング10位として、会議に出席し意見を述べるという責任の。だから、この緊張は会議が終わるまで持ち続けていたいんです」
「そうか・・・・・・ははっ、相変わらず光司っちは真面目だねー。でもその真面目さが光司っちの良いところだ。っと、つい話しちまった。これ以上は流石にまずいから、行こうか。ゲートは俺が開くから」
「はい、お願いします」
スマホの時計を見た刀時が、ポリポリと頬を掻きながらそう言葉を述べる。刀時の言葉に光司は頷いた。
「ほいよっと。――守護者が希う。我を守護なる神の元へ。開け、守護の門よ」
刀時が詠唱すると、刀時の半纏の内にある簪が発光した。すると刀時と光司の前に、人が2人ほど通れるほどの光のゲートが現れた。
「さあ、面倒ごとをやりに行くか」
「っ、行きましょう」
刀時は軽くため息を吐き、光司はその顔を更に真面目なものにする。
そして、刀時と光司はその光のゲートを潜り抜けた。2人がゲートを潜ると、光のゲートは消滅した。
2人の姿は地上からしばしの間消えた。




