第482話 会議前日(2)
「身も蓋もないって言っちまってるじゃねえか。後、俺に緊張なんてもんはない。緊張なんてもんは、とうの昔に水に流しちまったからな」
ふっと格好をつけたつもりか、気色の悪い笑みを浮かべた前髪野朗。そして、その言動は厨二病全開である。傍から見たらバカじゃねえかと思う。お前の歳で緊張がないわけない。まず水に流さなければならないのは、お前のその性格と言動である。
「あなたは本当に不思議な人物ですね。先ほどは凄まじいまでの察しの良さを見せたのに、なぜそんな痛々しい発言をするんですか? とても同一人物とは思えませんよ?」
「喧嘩売ってんのかクソ女神。てめえに俺の言葉のセンスが理解できねえだけだろ」
ソレイユの煽るような言葉に、前髪野朗はハッと笑ってみせた。完全にソレイユをバカにした形である。
「誰がクソ女神ですか!? ぶちのめしますよこのクソガキ!」
「おーおー、女神の品性が知れるじゃねえか! 先に喧嘩売ってきたのは誰だか忘れたか? あっ、お前アホ女神だったな。悪い悪い」
「こんの・・・・・! クソだのアホだの、女神に対して無礼が過ぎます! ええい、今日という今日は許しません! 謝りなさい、この見た目不審者!」
「誰が見た目不審者だコラ! 俺の外見は俺の自由だ! つーか俺の見た目は断じて不審者じゃねえ!」
「どう見ても不審者ですよ? あ、不審者が話しかけて来ないでもらえますか?」
「上等だ! 表出ろババア!」
「禁句を言いましたねこの前髪! いいでしょうやってやろうじゃありませんか!」
ギャースカギャースカと、もはやいつも通りソレイユと影人は言い合いを始めた。全く毎度毎度よく飽きない奴らである。
「はあ、はあ・・・・・ったく、元気な女神だぜ」
「あ、あなたこそ見た目の割に、よく回る口ですね」
3分ほど言い合い、軽く息切れをしながら影人とソレイユはお互いを睨み合った。未だに、お互い相手に対する文句はまだまだあるが、ここらが潮時だろう。1人と1柱は睨み合いをやめて顔を逸らした。
「・・・・・・・ところで、朝宮と月下が参加してる研修の方はどうなんだ? まあ、俺はその研修が何をするのかはあんま知らないけどよ」
話題転換の意味を兼ねて、影人はソレイユにそう聞いた。陽華と明夜は8月の頭から研修に参加しているという事だが、影人はその研修の内容までは知らない。まあ、軽い興味というやつだ。
「研修は昨日から実戦研修に移行した辺りですかね。研修の内容は例年と変わりませんから、それで合っているはずです」
ソレイユも、もういつも通りの調子に戻ると、影人の質問に答えを返してくれた。




