第481話 会議前日(1)
「影人、いよいよ明日ですよ」
「ああ? 何がだよ?」
8月9日木曜日、午後1時過ぎ。陽華や明夜たちが、扇陣高校で昨日から始まった新たな研修を行なっているであろう時間、神界ではソレイユと影人が会していた。
「何って、光導会議と守護会議の事ですよ。明日8月10日に私の所では光導会議が、ラルバの所では守護会議が開かれます。前にも言いましたが、明日の会議の結果によって、スプリガンの今後の処遇が決まるのです」
ソレイユは聞き返してきた影人に向かって、そう説明を加えた。ソレイユの説明を聞いた影人は「ああ、それか」とあまり興味がなさそうに言葉を返した。
「・・・・・・・別に俺からすりゃ、けっこうどうでもいいんだよな。まあ、お前はそうは考えてないみたいだけどよ」
地べたに座っている影人は、適当にそう呟く。明日の会議の結果次第では、影人が演じるスプリガンは光導姫・守護者から明確に敵と認定される可能性がある。ソレイユはその事を危惧しているのだ。
「ええ、その通りです。あなたの役割とその力の性質上、あなたが光導姫・守護者から敵と認定される事はある程度は仕方ありません。ですが、その時は今ではない。あなたは正体不明・目的不明の怪人。必要とあらば、どちらの色にでもなれる人物。それこそが、あなたの最大の強みでもある。・・・・・その強みを生かし切るためにも、まだ時は必要なのです」
「っ・・・・・・・・・・・・お前、マジかよ。ていう事は、近い将来、俺はちょいと危険な橋を渡らないといけねえみたいだな。いや、今でもまあまあ危険な橋は渡ってるけど」
ソレイユのその言葉を受けた影人は、一緒驚いたような顔を浮かべると、どこかヤケクソのような笑みを浮かべた。影人には、ソレイユの言っている事がどのような意味であるのか理解出来てしまったからだ。
「・・・・・・・・・・前から思っていましたけど、あなたのその謎の理解力の高さは何なんですか? 普通は今の言葉だけでは、何のことだか分からないはずですけど・・・・・」
影人が自分の言葉の意味を理解した事に、ソレイユはいっその事呆れてしまった。影人の察しの良さは何だか怖いくらいだ。
「知るか。地頭がいいんだろ」
「何か腹立つ答えですね・・・・・・・ですが、安心してください。今のところ、それはあくまで仮定の範囲内です。余りにも、あなたのリスクが高過ぎますしね」
影人にイラッとしたような表情を向けつつも、ソレイユはそう言葉を付け加えた。それ、と言った指示代名詞の事はあくまで可能性の1つというだけだ。実際にそれをするとなると、様々な問題もある。
「そうかい。でも、それをする理由は何なんだ? ああ、勘違いするなよ。一応聞いてみたかっただけだ。やる、やらないはこの際どうでもいい」
影人が質問を1つソレイユにぶつけた。影人はソレイユの言っている事の意味を理解出来たが、その理由までは分からなかった。
「っ・・・・それは、またそれを本当に行うとなった時にお話しします。ほら、今日はその事を話すためにあなたを呼んだわけではありませんし」
しかし、ソレイユは苦笑いを浮かべるだけで理由を答えようとはしなかった。そのソレイユに影人は多少疑問というか違和感を覚えたが、確かに別に今する話でもないので、影人はその話題を流した。
「ま、別にいいが・・・・・・・つーか、会議に俺は出るわけでもないし、結局その話どうでもよくねえか? 頑張るにしても、それお前だけだろうし」
「何を身も蓋もない事を言ってるんですか・・・・・・それでも、話されるのはあなたの事がほとんどなんですよ? もっと緊張とかないんですか?」
影人が元の話題に戻りそう言葉を述べると、ソレイユがこれまた呆れたような表情を浮かべた。




