第479話 新たなる研修(4)
「うーん、榊原さんらしいわ・・・・・でも光司くん、陽華ちゃんと明夜ちゃんに、榊原さんが光導姫だって伝えてなかったのね。榊原さんも、2人が光導姫だって知らなかったみたいだし」
「だね。会長らしいや。――その事に関しては、一応個人情報だから伏せてたんだ。朝宮さんも月下さんも会長も、あまりそういう事は気にしない性格だとは思ってたんだけど、第3者がペラペラと喋るのはどうかと思って。後は、単純に伝えるタイミングがあまりなかったって事もあったんだけどね」
「なるほど。納得の説明だわ」
風音と光司は、真夏に対して苦笑を浮かべた。そしてステージを端にある階段から降りながら、そんな事を話していた。戦場で出会ったのならば仕方がないが、一応誰誰が光導姫・守護者であるというのは明確な個人情報でもある。もちろん自分から名乗ったり、本人から許可を得たりすればそれらは開示してもよい情報だが、それ以外ではできる限りそういった情報は胸の内に止めておくのが、半ばこの業界の常識と化している。
(あの人の学校、あの人も含めてけっこうアレな人が多いんじゃ・・・・・・・・)
光司と風音に続くように、端の階段からステージを降りる穂乃影はついそんな事を思った。正解である。生徒会長を始め、前髪野朗、カンニング補習バカ集団を筆頭に、風洛高校にはヤバい奴らがゴロゴロといる。ただの普通の公立の高校なのに、いったいどうしてこうなったのか。謎である。
「すまないな、少しグダグダとしてしまった。謝罪する。では、私以外の講師を改めて紹介する。まずは――」
穂乃影の後に刀時もステージを降り、全員がアイティレの横に並んだところで、アイティレは一旦空気のリセットを図った。そして、先ほど自己紹介をした真夏以外の4人のランキングと光導姫・守護者名を研修生たちに紹介していく。
「以上が、私と『呪術師』を含めた6人の講師だ。なお先ほども言ったように、光導姫『影法師』には補助に回ってもらおうと考えている。が、彼女も歴としたランカーの1人だ。今の諸君らよりは間違いなく強い。補助だからといって甘く見るなよ」
軽い釘を刺しながら、アイティレは研修生たちに視線を向ける。アイティレに自身の光導姫名を呼ばれた穂乃影は、少し恥ずかしそうにその顔を俯かせた。
ちなみに、アイティレが音頭を取っているのは、昨日の話し合いでそう決まったからだ。普段から陽華や明夜にスパルタ教官として2人の稽古に当たっているアイティレならば、研修の講師リーダーにピッタリだろうと風音が推薦し、他の者たちも満場一致で風音の推薦に賛成した。アイティレはその生真面目な性格から、二つ返事でその役目を了承した。というのが、アイティレが音頭を取っている理由である。
(そっか。帰城さんも色々と教えてくれるんだ・・・・・ていうか、ランキング75位って普通に凄い)
穂乃影の姿を見た陽華は、内心そんな事を思っていた。また機会があれば会ってみたいと思っていた穂乃影と、ここで会えるとは陽華は考えていなかった。
試しにというわけではないが、陽華は小さく穂乃影に向かって手を振った。陽華の合図に気がついたのか、穂乃影はチラリと陽華の方に視線を向け、軽い笑みを浮かべ小さく頭を下げた。




