第478話 新たなる研修(3)
「ふっはっはっ! 私登場! やあやあやあ! 初めましてね新人たち! 私こそ光導姫ランキング10位の『呪術師』よ! 今日からしばらく私が色々と教えてあげるわ!」
その見覚えのある紙の髪飾りをつけた少女が、ステージから華麗に飛び降り、アイティレの横に着地した。そして、ふふんといった感じの顔で胸を張る。
「「「「「・・・・・・」」」」」
集まった少年少女たちは、『呪術師』こと榊原真夏の登場の仕方とそのハイテンションに呆気に取られていた。まあ、無理はない。いきなりこんなぶっ飛んだ自己紹介をすれば誰でも驚く。もしくは、ヤベエ奴だと思われて引かれているのか。その確率はおそらく半分半分といったところではないか。
「あーあ・・・・・・・・・俺、榊原がこうやって登場しようって提案した時からこんな予感してたんだよね・・・・・やっぱり、やめさせときゃよかった」
ステージ上で軽く頭を押さえながら、『侍』こと剱原刀時がため息を吐く。その表情は軽く死んでいた。
「「か、会長・・・・・・・!?」」
そして、今まで真夏が実は光導姫であるという事を知らなかった陽華と明夜は、自分の高校の生徒会長の突然の出現に心底驚いていた。
「ん? 私を会長と呼ぶ声が副会長以外から・・・・・・・? って、風洛の名物コンビじゃない! え、何。あなたたち光導姫だったの!? ・・・・・ぷっ、ははははははははははははははははははっ! 世界狭すぎでしょ! こんなの笑うしかないわ!」
自分の高校の名物コンビの姿がある事に気がついた真夏は、何がおかしかったのか突然笑い声を上げた。この瞬間、悲しいお知らせがある。真夏に驚いた視線を向けていた少年少女たちの視線が、完全に引いたものへと変わったという知らせである。ちなみに真夏本人はその事に全く気がついていない。最近出番のない前髪野朗と似たような扱いである。それでいいのか生徒会長。
((あ、間違いなく風洛の会長だ・・・・・・・))
姿からまあ真夏という事は確定していたのだが、その反応を見た陽華と明夜は、真夏が真夏であるという事を確信した。
「・・・・・・・『呪術師』。とりあえず一旦笑うのをやめろ。確かに、お前の自校の生徒であるあの2人が光導姫だと知らなかったのなら、お前の驚きも理解出来なくはないが、今は研修の時間だ。そういった個人的な話は後にしろ」
体育館中に笑い声を響かせる真夏に、アイティレが注意を加える。てっきり、真夏は陽華と明夜が光導姫であると知っているものだと思っていたが、今の反応を見るに、お互いが光導姫であるという事を知らなかったようだ。アイティレからしてみれば、それが少し意外だった。
「はいはい、ごめんなさいっと。ほら、あなたたちもさっさと降りてきなさいよ。いつまでそこにいるつもり?」
「てめえがそれを言うなよ!? お前が空気ぶち壊したから、タイミングがなかったんだよ!」
アイティレの忠告に素直に従った真夏が、ケロッとした顔でステージ上の4人に向かって首を傾げてみせた。真夏の言葉に、4人を代表したかのように刀時がそう叫んだ。その叫びは、心からの魂の叫びであった。




