第477話 新たなる研修(2)
「――む、来たか。陽華、明夜。しばらくぶりだな」
第3体育館に入ると、ステージ前にいた銀髪赤眼のロシア人の少女――『提督』こと、アイティレ・フィルガラルガが自分たちに向かってそう声を掛けてきた。服装はここに集まっている研修生たちと同じくジャージ姿だ。
「・・・・・オーマイガー」
そして、アイティレの姿を確認した明夜は反射的にそう言葉を出していた。
「? なぜ、いきなり英語の俗な驚嘆の言葉を使う? 明夜はどうしたのだ、陽華?」
「あはは・・・・・・ちょっと祈りが届かなかったみたいです」
首を傾げ不思議そうな顔をするアイティレに、陽華は苦笑いを浮かべる。陽華のぼかした答えにアイティレは「?」と頭に疑問符を浮かべていたが、結局それ以上明夜の言葉には言及しなかった。
「まあいい。それよりお前たちも早く集合しろ。あと1分で研修の説明を始めるからな」
アイティレの言葉を受けた2人は、その言葉に従い既に集まっている少年少女たちの元へと加わった。
「おー、陽華。腹は大丈夫やったか? というか、あんたあの綺麗な外国人の姉ちゃんと知り合いやったんやな」
「あ、火凛。うん、出したらスッキリしたから!」
先に集合していた火凛が陽華に軽く手を振る。そして火凛の横には暗葉もいた。
「? 暗葉は何でそんなに眩しいものを見るように目を細めてるの?」
「わ、私には、あんな綺麗な人は眩しく見えるから・・・・・・・・」
明夜が目を細めている暗葉にそう尋ねると、暗葉はそう答えを返してきた。どうやらアイティレの姿が暗葉には眩しく映るらしい。確かに、アイティレの容姿は同性の目から見てもずば抜けて美しいので、暗葉の気持ちも分からないではなかった。
「さて、これで今年の研修生は全員揃ったな。では、これより新たな午後の研修を始める。私の名前はアイティレ・フィルガラルガ。光導姫ランキング3位、『提督』の名を持つ者だ」
アイティレが自身の光導姫ランキングの順位を告げると、研修生である少年少女たちは驚いたような表情を浮かべていた。ほとんど全員の少年少女たちは最上位ランカーと邂逅したのはこの時が初めてだったからだ。
「今回は諸君らの研修の講師を仰せつかったわけだが、実はこの研修の講師は私1人ではない。私以外にもあと5人講師がいる。1人は補助に回ってもらうが、後の4人は私と同様に全員ランキング10位内だ」
アイティレがそう言うと同時に、体育館のステージの脇から5人の人物が新たに姿を現した。その内の3人はアイティレと同じジャージを着ているが、残りの2人は違うジャージを着ていた。というか、陽華と明夜はその2人のジャージと姿にはっきり見覚えがあった。




