第476話 新たなる研修(1)
「今日で研修も半分か・・・・・早いような遅いような、そんな感じね」
「そうだね。今日の午後から研修の内容が変わるけど、風音さんも来るのかな? ほら、研修には関わるって言ってたのに、まだ一回も会ってないでしょ?」
8月8日水曜日。午前の研修を終えた明夜と陽華は、扇陣高校の第3体育館に向かいながら、そんな事を話していた。
今日から午後の研修は変わる。しかし、いったいどう変わるのかは2人も知らない。
「あー、それは来るんじゃない? 風音さんが嘘つくはずないし、今まで来てなかったしタイミング的にはもう今日からしかないでしょうし」
陽華の言葉に明夜もそう言葉を述べた。この夏の研修が始まる前に風音は、陽華と明夜に研修に自分も関わると言っていた。ならば、恐らくは今日からの研修に風音も出てくるはずだ。
「風音さんが関わるって仮定すると・・・・・・・・なんかアイティレさんも関わってきそうな予感がするよ、私」
「アイティレさんが関わってきたら、絶対キツいこと確定じゃない・・・・・・正直に言って、それはちょっと御免被りたいわ・・・・・」
アイティレも研修に関わるかも、という陽華の言葉に明夜はその表情を少しげんなりとさせた。普段から、アイティレに稽古という名の実戦を受けている陽華と明夜は、アイティレがいわゆるスパルタである事をよく知っている。
「まあでも、結局予測でしかないから始まってみないと分からないよ」
「違いないわね。どうかアイティレさんはいませんようにって、今のうちに祈りだけ捧げとくわ」
「もう、明夜は大げさだなー」
両手を合わせて目を瞑る明夜を見て、陽華は笑った。なんとも明夜らしい。
そうこう話している内に、2人は扇陣高校第3体育館前にたどり着いた。研修でここ最近毎日この体育館に来ている事、また研修が始まる前から陽華と明夜はこの体育館を利用しているという事もあり、他校の体育館だというのに、この体育館も随分と見慣れてしまったものだ。
ちなみに、研修の間に陽華と明夜が仲良くなった火凛と暗葉はもう先にこの体育館の中にいるはずだ。普段は4人で午後の研修が行われるこの場所に来るのだが、今日は陽華が珍しくお腹の調子が悪かった事もあり、明夜だけ付き添いをして火凛と暗葉には先に第3体育館に向かうように伝えた、というのが推察の理由である。
「さあ、風音さんがいるか、アイティレさんがいるか、いざ行かん! ・・・・・ってな感じで開けるわよ?」
「って、そんな前振りいらないよ! さっさと開けて明夜!」
体育館のドアに手を掛けた明夜が、一呼吸置いて陽華の方に顔を向ける。その幼馴染の不要な前振りに、陽華はガクッと首を落としてそうツッコんだ。
「何よユーモアがないわね。じゃあ、開けるわよ」
陽華のツッコミに軽くため息を吐いて、明夜は体育館のドアを開けた。




