第473話 妹と隣人と(3)
「影人の事? そうね・・・・・・・・とても愉快な人間だと思うわ。見た目は暗めだけどね。一見ぶっきらぼうな感じだけど、とても優しい子だし。後は・・・・・ちょっとミステリアスな雰囲気も私は気に入ってるわ」
シェルディアは日傘の下で軽く悩みながらも、そのような答えを穂乃影に述べた。ミステリアスな雰囲気というのは、シェルディアが影人と初めて会った時に感じた雰囲気のことだ。
「・・・・・・・・・シェルディアちゃんの目からは、あの人はそんな風に見えてるんだね。・・・・・・確かにシェルディアちゃんの言う通り、あの人は見た目の割には愉快な性格をしてると思う。厨二病な所と独り言が癖な所を愉快と言えばだけど」
シェルディアの影人に対するイメージを聞いた穂乃影は一部そのイメージを肯定する。
「・・・・・・・・・・私の目から見えるあの人は、孤独好き。あんな見た目で愉快な性格をしている割には、あの人は人と関わるような事は自分からは絶対にしないの。昔は違った。ぶっきらぼうな所は昔からあんまり変わってないけど、昔は人と関わろうとはしてた。そういう意味では、あの人は普通の人だった」
穂乃影の言葉が世界に零れる。普通ならば、穂乃影はこんなに自分の思っている言葉を誰かには言ったりしない。しかし、シェルディアにはつい内の思いを言ってしまう。不思議だ、自分より年下の少女なのに。さっきは胸の内を知られたくはないと思っていたのに。
「へぇ、そうなの。確かに影人と私が出会った時も、私から関わっていったわね。・・・・・それで? 結局あなたは影人の事で何を考えていたの?」
核心を突く問いを、シェルディアは穂乃影に投げかける。シェルディアからしてみれば、影人の過去の少年象もかなり興味深いが、今はそれよりも穂乃影の悩みの方に興味があった。
「っ・・・・・・・・」
結局、影人の事で悩んでいる事をシェルディアに看破された穂乃影。そして仕方なく、穂乃影は自分が考えていた事をシェルディアに吐露した。
「・・・・・・なるほどね。影人が自分が知らない間に変わったんじゃないか。あなたは・・・・・・・・・それが寂しかったのかしら?」
シェルディアが穏やかな顔で、優しい声音でそう言った。シェルディアの言葉を受けた穂乃影は思わず立ち止まり、その目を大きく見開かせた。
「寂しい・・・・・・・・・・・・?」
「違った? 私にはそう思えたのだけど。自分の知らない内に、兄が変わってしまったのではないかという事が、妹のあなたを不安にさせ苛つかせた。それは、寂しいという気持ちととてもよく似ているのではなくて?」
驚いている穂乃影の前方に立ったシェルディアは日傘の下から穂乃影を見上げる。どこか諭すような口調をあえて意識しながら、シェルディアは穂乃影に語りかける。




