第468話 妹の疑念(3)
「じゃあ、そろそろ私が私を紹介するわ! 私の名前は榊原真夏よ! 名前の通り、夏は私の季節! ランキングは10位! 光導姫名は『呪術師』! 癪だけど、本当に癪だけど風音より下よ! 後輩にランキング負けてるのは死ぬほど悔しいけど、いつかランキング抜いてやるから今に見てなさい!」
「お、お待ちしてますね・・・・・・?」
他の者たちが席に座っている中、真夏は急に立ち上がり、またもや右の人差し指を風音に突きつけた。何だか途中から自己紹介というよりは、宣言になっていたような気がするが、まあそこは真夏らしいと言う他なかった。真夏の宣言に、風音はどう答えたらいいか分からなかったので、とりあえずそう言葉を返した。
「何でお前は普通に自己紹介できねえんだよ・・・・・・・」
「会長、学校名と学年も流れ的に言っておいた方がいいかと思います」
「む、確かにそうね」
刀時が軽く頭を抱える中、光司が真夏にそう言葉をかけた。光司の提言を受けいれた真夏は自己紹介にこう補足を付け加えた。
「私は風洛高校という高校に通ってるわ! ここから少し距離はあるけど、都立の普通の高校よ! 学年は3年! あと生徒会長をやってる! 以上!」
「あ、やっぱり・・・・・・・」
真夏の所属する学校名を聞いた穂乃影は、思わずそう呟いていた。やはり、真夏と隣の光司の制服は影人と同じ風洛高校のものだったようだ。
「む? 何がやっぱりなの?」
「あ、いえ・・・・・・別になんでもないので、気にしないでください」
穂乃影の呟きを耳に捉えた真夏が、穂乃影の方を向いてそう聞いてきた。真夏のその問いかけに穂乃影は首を横に振った。別にその高校に兄が通っているという情報はどうでもいいものだからだ。
(それに・・・・・こんな美少女な人とイケメンが、あの人のこと知ってるわけないし。ここであの人の名前出して微妙な空気になるのはもっと嫌だし・・・・・・)
いかにも学校カーストが高そうな2人に、いかにも学校カーストが低そうな兄の名前を出す。それは微妙な空気を形成する要因の1つだ。まあ、影人はあの見た目の割には、全くそういったものを気にしない性格なのを穂乃影は知っているが、見た目と孤独が好きという事もあり、カーストは低いだろうと穂乃影は勝手に思っていた。
そういった微妙な空気は穂乃影は苦手だし、面倒だと考えた。顔合わせと話し合いで微妙な空気を作りたくないと考えるのはごく普通の考えだ。ゆえに穂乃影は真夏にそう返答したのだ。
ちなみに実際は、影人はカースト制度というものからも孤立している、特異中の特異な存在である。なぜならば、クラスメイトから完全にヤバイ奴だと思われているからだ(癖である独り言が原因で)。クラスメイトから影人は、最低限しか関わってはいけない人物だと認識されている。さすがは前髪野朗である。妹がその事を知ったら、完全に引かれるのは必至である。
「ふーん、そう」
穂乃影の配慮たっぷりの答え(もちろん真夏はその事を知らないが)を聞いた真夏は興味を失ったように穂乃影から視線を外した。




