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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第459話 心、燃えて(4)

「それじゃあ・・・・・スタートです!」

 合図は海輝ではなく、海輝と同じくこの扇陣高校の教師であり、元光導姫でもある加辺美希が合図を行った。その美希の言葉を機に、少年少女たちは一斉に走り出した。

「ふっ・・・・・・!」

 陽華は最初から飛ばし、全速力に近いスピードで木を目指し駆けた。スタート地点から木までの距離はおよそ200メートルあたりといったところだ。それを往復するから、1本の距離はおよそ400メートル。それを10本なので、総距離は4キロメートル。ウォーミングとしては、中々にハードだ。

 しかし、フィジカルお化けと明夜に揶揄された陽華にとってこの程度の距離ならばあまり問題にはならない。本当に帰宅部なのが謎な少女である。

(よし、1本目!)

 そのフィジカルで往復ダッシュのトップに立った陽華は、早速スタート地点に戻り1本目のダッシュを消化した。残りは9本。

「ッ・・・・・・・!?」

 だが、そんなトップを走る陽華に追いついてくる少女がいた。ツインテールが特徴な少女、双調院典子である。

「しっ・・・・・・!」

 陽華な後ろについていた典子は、スピードを更に上げると陽華と並んだ。そして、また更にスピードを上げると、遂には陽華を抜かした。これでトップは典子に代わった。

「くっ・・・・・・!」

 これは体力作りの研修、そのウォーミングアップだ。ゆえに順位を競っているわけではない。逆にここで体力を使いすぎてしまえば、後のメニューについていけなくなる可能性が大いにある。

(うん。別に私は順位を競ってるわけじゃないし、ここは自分のペースで走ろう。しっかりとペース配分を――)

 陽華が内心、冷静に自分にそう言い聞かせている時、自分の前を走る典子がチラリと首を陽華のいる後方に向けた。いったいなんだと、陽華が疑問を抱いていると、次の瞬間、典子はフッと笑みを浮かべた。いわゆる、「鼻で笑う」といった感じだ。

「あ・・・・・・」

 その笑みは、暗に「なんだその程度か」と陽華を揶揄しているようだった。典子はもう陽華に興味はないとばかりに、再び前方に首を戻すと、2本目の折り返し地点である木を目指した。

 その典子のバカにしたような笑みを受けた陽華は、自分の心に苛立ちが生じたのを感じた。

(・・・・・・・・・あれは絶対に喧嘩売ってたよね。たぶん、今朝の事で私に対抗心燃やしてきたんだろうけど・・・・・正直言って、このまま負けたら面白くないよね)

 陽華の心に火がついた。心が燃える。上品なお嬢様だと思っていたら、中々どうして仕掛けてくれる。喧嘩の売り方を知っているに、破天荒なお嬢様といった一面でもあるのか。

(いいよ、その喧嘩買ってあげる。別にあなたの事が嫌いとかじゃないけど、今日、今、あなたに負けるのは嫌だ!)

 陽華は走りのスピードを上げた。徐々にではあるが、典子との差を縮めていく。更にスピードを上げる。この際、残りの体力事情は無視する。いざとなれば、残りのメニューは気合で補えばいい。

 全速力。木の地点を折り返した典子の2秒後、陽華も木の地点を折り返した。そして木に手をつかせた反動で、陽華は更なる一瞬の加速を手にした。

 そして、トップはまた陽華に代わった。

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