第458話 心、燃えて(3)
「・・・・・・・・・・なんて言うか、火凛ていい人だね。いや気のいい人だとは思ってたけど」
「本当にね・・・・・火凛、あなた本当にいい意味でアホだわ」
「・・・・・・・・あんたら喧嘩売っとんのか?」
ジトッとした目で火凛がそう言った。2人はバカにしているわけではないのだろうが(明夜の場合は一見バカにしているように思えるが)、火凛にはどうもそう思えてならなかった。
「でも、ありがとうね火凛。火凛が賛成してくれて、実はすっごく嬉しいんだ」
「私たちの意見ってきっと少数派だからね。賛成してもらえるのは、なんだか元気が出てくるの」
火凛の言葉に首を振りながら、陽華と明夜は笑顔を浮かべた。そんな2人を見た火凛は、「そうかい、ならよかったわ」とフッと口元を緩めた。
「わ、私は火凛みたいに理由を決める事は出来ないけど・・・・・・・ふ、2人の味方でありたいって思ってる・・・・に、煮え切らない答えでごめんだけど・・・・・」
自分も何か言わなければと思ったのか、暗葉もそんな言葉を述べた。自分の中途半端な答えを申し訳なく思っているのか、声は徐々に小さくなっていったが。
「うんうん、そんな事ないよ。ありがとう暗葉」
「そうよ、全然煮え切らない答えなんかじゃないわ。暗葉の優しさは確かに受け取ってるから」
2人は暗葉にも感謝の言葉を述べた。陽華と明夜からそう言われた暗葉は、「そ、そう・・・・・・?」と照れたような顔になった。
「さてと、ほな全員飯も食い終わった事やし移動しよか。ああ、そやそや。1つだけスプリガンについて、聞きたい事あったんやけどええか?」
「なに? 私たちで分かる範囲でなら答えるけど・・・・・」
火凛がそういえばといった感じで、右の人差し指を1つ立てた。陽華は軽く首を傾げ、そう前提した。すると火凛は、非常に真剣な顔でこんな質問をした。
「重要な事や。スプリガンって――イケメンなんか?」
ガクッ、火凛の質問をきいた3人は、そんな擬音が出そうな感じで首を落とした。
「はい、では今日も体力作りをしましょうか。ストレッチも済んだ事ですし、皆さんは昨日と同じようにまずあの木まで往復ダッシュをして来てください。本数は10本です」
午後の研修2日目。この研修の講師を務める扇陣高校の教師で、元守護者でもある中田海輝は柔和な笑顔を浮かべ、研修に参加している少年少女たちにそう指示した。
「う・・・・・ま、また私は死ぬのね・・・・・・・」
「大丈夫よ暗葉。昨日の骨も拾ってあげたでしょ。今日も私があなたの骨を拾ってあげるわ」
「いや、だから会話がズレとんねんて・・・・」
「あはは・・・・・仕方ないよ火凛。ズレてなきゃ、もはやそれは明夜じゃないもの」
メタモルボックスによって、平原に移動している少年少女たちがスタート地点につく。陽華、明夜、火凛、暗葉の4人もそんな会話をしながら、スタート地点についた。




