第457話 心、燃えて(2)
「・・・・・私たちは、スプリガンに命を助けてもらったの。それも1度だけじゃない、何回も。だから、私たちにはスプリガンが敵だとはどうしても思えないのよ。彼は、私たちの命の恩人だから」
別に隠す事でもないので、陽華と明夜は2人に今までの自分たちのことを話した。
「はー・・・・・・・・・あんたら、えらい経験してきたんやなあ・・・・・ウチも新人やから言えた事はないかもやけど、普通の新人の光導姫はあんたらみたいな経験絶対せんやろ」
「す、すごいね・・・・・私だったら、ぜ、絶対死んでる気がする」
陽華と明夜の話を聞いた火凛と暗葉は、それぞれそんな感想を漏らした。火凛は2人のその異常な経験に驚きを通してもはや呆れ、暗葉は素直な尊敬の視線を2人に向けた。
「まあでも、あんたらがスプリガンの事を敵やないって思いたい気持ちは理解できたわ。そりゃ命の恩人を敵やとは思いとうないもんな。うん、シンプルな理由やんか。ウチはそのスプリガンに会った事ないから正直なところは分からへんけど、今んところウチはあんたらの意見の方に賛成やわ」
「「え・・・・・・・・?」」
だが、火凛はニカリと笑みを浮かべそう言葉を続けた。火凛の賛成という思ってもいなかった言葉に、陽華と明夜は意外そうにその目を見開いた。
「なんやその意外そうな顔は? まさか賛成されるって思ってもなかったって表情やな。ああ、理由が気になんのか? それやったら簡単な事やで。ウチはあんたらを気に入っとるからな。気に入っとる奴が気に入ってる奴やったら、ほんまもんの悪人はおらんやろ」
「そ、それだけ・・・・・・?」
「マ、マジで言ってるの・・・・?」
火凛の賛成の理由を聞いた陽華と明夜は、ついそう聞き返していた。
「マジもマジ、大マジや。まあ、ウチがあの双調院典子って子を気に入らんっていう理由も多少あるけどな。ウチはな、自分の感情を大事にしとんねん。で、ウチの感情はあんたらの方に傾いとる。話を聞いて、余計感情は傾いたわ」
火凛はそこで言葉を一旦切り、水の入ったコップに手を伸ばした。そして、「ぷはっ」と水を飲み終え喉を潤した火凛は、こう言葉を続けた。
「ウチはあんまり頭はようない。だから、ごちゃごちゃしたんは嫌いや。考えってのは、シンプルでええねん。で、あんたらの理由はあのツイテのお嬢様よりシンプルや。どやこれで満足か?」
それを一言で表すと、「気に入っている」という言葉になる。火凛はそう言葉を付け加えた。




