第452話 研修2日目、会議決定(2)
「――おはようございます、皆さん。時間となりましたので、研修2日目の午前の研修を開始したいと思います」
陽華と明夜が席について火凛や暗葉と少し話していると、ガラリと会議室の扉が開けられて、この扇陣高校の校長である神崎孝子が姿を見せた。孝子は壇上に上がると、会議室にいる少年少女たちにそう言葉を述べた。
「今日お話しする知識は――」
孝子が午前の研修を開始しようとすると、スッと前方斜め右の席から(陽華たちから見て)手が上がった。
「神崎校長、1つ質問または提案させていただいてよろしいでしょうか?」
育ちの良さが知れる雰囲気、ツインテールの髪型。手を挙げた少女は、研修初日から注目を集めた双調院典子であった。
「あなたは・・・・・・・双調院さんですね。いいでしょう、発言を許可します」
どうやら孝子は典子の名前を知っているようだった。まあ、この学校の校長といえば研修を開いている側のトップだろう。ならば、研修に参加している生徒の名前と顔も事前に知っていても不思議ではない。もしくは、昨日午後の研修の講師を務めていた2人から典子の事を聞かされたか。
どちらにしろ、孝子が典子の名前と顔を知っていた。いま必要な事実は言ってしまえばそれだけだ。
「はい、では僭越ながら。確かに校長のお話しは、私たちには必要不可欠と言っていいほどのお話しだと思います。少なくとも、私は昨日の座学でそう思いました。ですが、いま現役で光導姫・守護者として戦っている私たちとしては、今の現場を取り巻く情勢、又は状況についてのお話しを先にしていただきたいと思うのです」
「・・・・・・・・・その情勢、又は状況についてのお話しとは、具体的にどのような話でしょう?」
典子の発言を受けた孝子が、典子にそう聞き返す。会議室の緊張感が高まる。今、会議室にいる者の全ての視線は典子に集まっていた。
「では申し上げます。具体的に私が話していただきたい話は・・・・・・・・・・・現在様々な噂が流布されている怪人、スプリガンの事です」
「「ッ・・・・・・・・!?」」
その名前を聞いた陽華と明夜は、半ば無意識に息を呑んだ。
「スプリガン・・・・? それってあの戦場に現れるって言う正体不明・目的不明の噂の怪人だよな?」
「何でも全身黒づくめで金色の目をした不吉な黒猫みたいなやつだって聞いたけど・・・・・・・」
「光導姫と守護者を助けたって私は聞いたけど・・・・・」
「俺は光導姫と守護者に攻撃して来たって聞いたぜ」
「俺もだ。噂によると、闇の力を使うらしい」
「え? それって、レイゼロールサイドの闇人じゃないの?」
ザワザワ、とスプリガンの名前が出た途端、会議室にいる少年少女たちが、スプリガンの様々な噂について言葉を発した。
「スプリガンか。確かにウチも最近その噂は聞いたなー」
「わ、私も・・・・・・・一緒に戦った守護者の人から聞いた・・・・」
陽華と明夜の後ろに座っていた火凛と暗葉も、スプリガンについて発言していた。会議室がざわめく中、孝子は「ご静粛に」とよく通る声でそう言った。
「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」
鶴の一声、とでも言えばいいか。孝子のその言葉を聞いた少年少女たちは、ピタリと何も発言をしなくなった。孝子の声には、有無を言わせぬ力が感じられたからだ。




