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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第45話 理由(3)

「ん? 何だ・・・・・?」

 橋の歩道にもたれ掛かっていた影人はどこからか聞こえてきた叫び声のようなものを聞いて、疑問の声を放った。

 まあ、おそらくその声から陽華と明夜ということくらいは影人にもわかったのだが、2人が何に驚いてそのような声を上げたのかは分からなかった。

「・・・・・・どうでもいいから、あいつら早く帰らねえかな」

 変身を解除した影人は車も人もいない橋の歩道で1人ため息をついた。

 今は歩道の壁にもたれ掛かっているから外から影人の姿は見えないが、移動するとなると当然、明夜や陽華、光司にあの勘の良い謎の光導姫たちにも自分の姿が見える。あの4人がいる場所からこの橋が離れているとはいえ、見つからないという保証はない。

 ゆえに影人は動けずにいる。影人が学校に戻るためには、あの4人がさっさと変身を解除して帰ってもらうしかないのだ。(陽華と明夜、光司は影人と同じで学校に戻るのだが、それは時間をずらせばいいだけだ)

「・・・・・・5時間目には戻りてえな」

 昼飯を食べていない腹がグゥと鳴った。








「そ、そんな学校があるんですか・・・・・・?」

「は、初耳だわ・・・・・・!」

 暁理が話した情報にびっくら仰天の陽華と明夜。2人の様子に暁理はニッコリとした表情を浮かべた。

「いいリアクションだね。まあ、僕も初めて聞いた時は驚いたよ。そんな学校があるだなんてね。でも、その学校表向きは普通の学校なんだよ。当たり前っちゃ当たり前なんだけどね」

「そうなんだ。でも場所は東京都内だからけっこう近いよ。2人は都立の扇陣おうじん高校って聞いた事ないかな? そこがその学校なんだ」

 暁理の説明を引き継ぐように光司が詳しい情報を2人に伝えた。光司の言葉を聞いた2人はその首を横に振った。

「ごめん私は知らない。私たち高校決めたの家からの近さだったから・・・・・」

「ええ。ちょうど家の近くに公立で私とレッドシャインが行けそうな偏差値の高校があったからそこ一本で受験したしね」

(わかるわー)

 2人が風洛を受けた理由が自分と全く同じだったため、暁理は内心うんうんと頷いた。

「でも、光導姫と守護者のための学校ってもちろんですけど一般には伏せられてるんですよね? ならその情報はどうやって知るんですか?」

 陽華が最もな疑問を投げかけてくる。その質問に答えたのは光司だった。

「光導姫や守護者になればソレイユ様、ラルバ様経由で国に知らされる。僕たちの場合は日本政府にだね。だから国は全ての光導姫・守護者を把握している。そこで高校受験を控えている中学生たちが光導姫・守護者になった場合は、家にそれとなく扇陣高校のパンフレットが届くんだ。そしてその中に本人しかわからないように情報が書かれているってわけだよ」

「あ、そうそう。高校生から光導姫になった人物の所にも、一応パンフレットは届くよ。転校しませんかってことでね。僕の所にも去年届いたし、ちなみに転校するといろんな特典付き。2人はまだ届いていないみたいだし、そろそろ届くんじゃない?」

 暁理が補足を入れる。その説明を聞いた2人はコクコクと首を縦に振りながら目を輝かせている。

「へぇ・・・・・・! すごいなー! ね、なんだかどうしようもなくワクワクしてこない!?」

「そうね! ちなみに聞きたいんですけどその特典ってどんなものなんです?」

 明夜が気になるといった感じでそんなことを聞いてきた。実は特典の内容をあまり覚えていなかった暁理は光司の顔を見た。

「えーと確か学費の全額免除は覚えてるんだけど・・・・・10位くん覚えてない?」

「僕もそこまではあまり覚えてませんね・・・・・あと学食が全てタダになる、じゃなかったでしょうか?」

「あー、そんなのもあったね。と、ごめんよ2人とも。今のところわかってるのはこれくらいで後はパンフレットで確認してほしい」

 暁理が手を合わせてごめんといった表情で2人に向き直る。そんな暁理に陽華と明夜は感謝の言葉を述べる。

「いえ、ありがとうございます! すっごい特典ですね、特に学食代がタダって・・・・・うう、転校しちゃいそう」

「まあ、あなたならそうでしょうね・・・・・・でも学費の免除もすごい。家計は大助かりよ」

 陽華はじゅるりとよだれが垂れそうになるのを我慢するように口元を拭った。どうやら何か妄想でもしていたようだ。明夜はまるでお母さんかのような意見である。

「あはは・・・・・・まあ、転校するしないは本人の自由だよ。実際に転校する人は多いって聞くけど、僕や彼みたいに転校しない人もいるからね」

 レッドシャインの正体を知っている暁理としては、陽華が学食代タダに並々ならぬ反応を示すのはわかっていたので、少し苦笑いだ。

「・・・・・・・・うん?」

「「「「ッ!」」」」

 突然、そのような声が聞こえ、4人は咄嗟とっさに闇奴化して気を失っていた男子中学生を見た。どうやら意識を取り戻しつつあるようだ。見ると、狸型の闇奴になっていた人物も「ううん・・・・」とうなされたような声を上げている。

「まずいな、ちょっと長居しすぎたみたいだ。じゃあね、3人とも! 機会があればまた会おう!」

 そう言い残して、アカツキは風のように去って行った。正直、学校ですれ違ったりはするだろうが、アカツキは自分の正体を3人に教えるつもりはなかったのでそのような言葉になった。

 後に残された3人も慌てたようにこの場を去ろうした。

「と、とりあえずここを離れよう!」

「そうね、変身は離れた所で解けばいいし!」

「だね、なら風洛に戻ろうか」

 すたこらさっさと3人は学校に戻るべく駆けだした。

 これにて光導姫と守護者の世間話はたまた井戸端会議のようなものは幕を閉じた。

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