第445話 ある少女との出会い(5)
「陽華は昔からフィジカルお化けだったから。そう言えば、あの双調院さんって人もかなり体力あったわね。私てっきりあんな質問したから体力ないって思ってた」
「ああ、それはウチも思ったわ。上品な感じのいかにもお嬢様って子やったけど、普通に体力あったしな。あんな見た目して、もしかしたら近接型の光導姫かもしれんな」
明夜と火凛が、海輝に質問した生徒――双調院典子の事について話す。的確な質問に、見た目からは想像も出来ないような身体能力。双調院典子は研修初日にして、研修に参加している者たちから一目置かれる存在になりつつあった。
「あ、そうだ。火凛と暗葉はこの後時間ある? せっかくだからお茶しない? 私たちいい喫茶店知ってるんだー。こっからちょっとだけ遠いけど、飲み物も食べ物もとってもおいしいよ!」
陽華が火凛と暗葉をお茶に誘う。陽華のその言葉に、2人は嬉しそうにこう答えた。
「お、ええな! 東京の喫茶店でお茶っていうのは洒落や。ウチは行くでー!」
「わ、私も大丈夫・・・・・・・・と、友達とお茶は憧れだったし・・・・・・」
「よし、じゃあ決まりね。『しえら』に向かいましょうか」
2人の答えを聞いた明夜がそう言葉を締め括る。この後は、扇陣高校を出て喫茶店「しえら」に向かう。それで4人の意思は決定した。
「あ、ごめん。私ちょっとトイレ行ってくるから、校門出たとこで待っててくれない? すぐに行くから!」
「分かったわ。じゃあ、私たちは校門前で待ってるから」
陽華の言葉に明夜が了解の言葉を返す。明夜と火凛と暗葉の3人から離れて、陽華は近くの校舎にあるトイレへと向かった。
「ふうー、スッキリ。そうだ、今日しえらさんの所で何食べようかな。ホットサンドとかオムライスも捨てがたいし、パンケーキとかパフェ系も捨て難いなー」
校舎のトイレから外に出た陽華がハンカチで手を拭きながら、そんな事を呟いた。午後の研修でかなり動き回ったため陽華のお腹はペコペコだ。朝宮陽華は色気より食い気を地で行く少女である。
「さてと、私も早く校門に・・・・・・・」
陽華が校門に向かって歩き始めようとすると、近くの別の校舎から1人の少女が出てきた。
扇陣高校の夏の制服姿の少女、言わずもがなここの生徒だろう。漆黒の長髪に端正な顔をしたその女子生徒に陽華の目が止まった。




