第444話 ある少女との出会い(4)
「あ、あの先生方。これはいったい・・・・・・」
大勢の少年少女たちが未だに驚いている中、驚きから立ち直りつつある典子がそう質問した。典子のその当然の質問に、今度は美希が典子の質問に答えた。なぜかドヤ顔で。
「ふふん、驚きましたか? この真っ白な箱は『メタモルボックス』て言ってですね、ソレイユ様とラルバ様から頂いた奇跡なんです!」
「加辺先生、それでは説明になっていませんよ・・・・・・・・ええと、皆さん。『メタモルボックス』というものはですね――」
美希の言葉に苦笑しながら、海輝が陽華と明夜が過去に聞いた説明と同じ説明を行った。
「す、すごい・・・・・・・さすがは神様・・・・・・」
「えげつない代物やな・・・・・・売ったらいくらくらいするんやろ・・・・・・・」
平たい岩の上に置かれたメタモルボックスを見つめながら、暗葉と火凛がそんな感想を漏らす。他の少年少女たちも暗葉や火凛と同様、「すごい・・・・・」「現実世界だよな、ここ・・・・・・?」といった感想を呟いていた。
「さて、皆さん。今から行う体力作りのメニューですが、まずは簡単なものです。あそこに1本の大きな木が見えますね。とりあえずあそこまでダッシュして戻って来てください。それを10往復です」
海輝がここから50メートルほど先に見える大きな木を指さした。なぜだろうか、その言葉を聞いた瞬間、海輝の柔和な笑みが黒い笑みに見えて来た。
「こ、ここからあの木まで往復ダッシュを10本・・・・・・・・ご、ごめんなさい明夜・・・・・や、やっぱり骨は拾ってほしい・・・・・・・・」
「し、しっかりして暗葉! 傷はたかが致命傷よ! まだ元気に生きれるわ!」
「いや、致命傷やったら元気に生きられへんやろ・・・・・」
海輝の言葉を聞いた暗葉がまた倒れそうになった。陽華と明夜が何とか暗葉を支える。ちなみに、暗葉が明夜に対してそう言ったのは、最初に明夜が骨は拾う発言を暗葉にしたのを覚えていたからだ。
陽華が心配そうな顔で、火凛は明夜の言葉に突っ込んでいると、海輝がパンパンと手を叩いた。
「でも、まずはストレッチからです。まずは体を暖めないと危ないですからね。それが終わり次第、皆さんには往復ダッシュを10本。その後に、また色々とメニューをこなしてもらいます」
「はーい! では、ストレッチ始めますよー! 私が見本見せるんで、皆さんはそれを真似してくださーい!」
自分の出番だとばかりに、美希が明るくそう言った。美希の言葉を聞いた少年少女たちは、少し戸惑いながらも美希の指示に従った。
「はい、まずは足を伸ばしますよー! イッチニーイッチニー!」
こうして青空の平原の下、午後の研修が始まった。
「ぜえ、ぜえ・・・・・・・・だ、だめだ・・・・・わ、私もう死ぬ・・・・・こ、これが明日も続くなんて・・・・・・・・」
「た、確かにこれがしばらく続くと思うとキツいわね・・・・・・・」
「あはは、確かにけっこうキツかったね。私もかなり息上がっちゃったし」
「あれでけっこうかいな・・・・・・ウチも体力にはまあまあ自信あったけど、ゲロ吐きそうやったで。陽華は大概な体力お化けやなー」
午後の研修開始から3時間ほど過ぎた、午後4時過ぎ。研修から解放された暗葉、明夜、陽華、火凛の4人は、帰路に着くべく扇陣高校の校門を目指していた。




