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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第44話 理由(2)

「こう――騎士くん?」

 真剣な眼差しの光司に陽華が思わず本名で呼びかけるが、暁理がいるため守護者名で光司の名を呼ぶ。その顔は何を言っているかわからないといった表情だ。

「そのことを知っているなら、あなたは知っているはずです。あの男、スプリガンが闇の力を使った闇人の疑いがあると」

「スプリガンが闇人・・・・・?」

 明夜がそれはどういった意味だというように言葉を漏らす。明夜からしてみれば、最初こそ陽華の命を助けてくれた少々ぶっきらぼうな人物だったが、今では自分の命も助けてくれた恩人である。その恩人を光司はあのフェリートと同じ闇人かもしれないと言っているのだ。

「・・・・・・それがあの時の言葉の意味だったんだね」

 一方、陽華はフェリートから逃げ出した後に光司が言っていた言葉を思い出した。「スプリガンをあまり信用しないほうがいい」陽華にはその言葉の意味は分からなかった。しかし、その意味が今の光司の言葉でわかった。

「・・・・・・確かにあの男は光導姫を2度も助けた。だが、僕は見た。彼の力は今まで僕が戦ってきた闇人と同じ闇の力だ。なら彼を警戒するのは当然だ」

 光司は決してスプリガンが嫌いだからなどという理由でそのようなことを言っているわけではない。光司には守護者として光導姫を守る義務と使命がある。そのような点から光司は不審な人物に注意を払うべきだと言っているのだ。それは守護者として何も間違っていない正当な意見だった。

 だが、陽華と明夜にしてみればスプリガンは恩人だ。ゆえに2人は光司のその言い分に何か言いたげな顔をしている。

(あちゃー、ちょっとまずいこと言っちゃたかな?)

 その場の空気があまりよくないことを感じとった暁理は、少し慌てたように話題を変えた。

「と、ところで2人は今年に光導姫になったんだよね? なら夏に研修を受けないとね」

 暁理は話題振りのつもりでそう言ったのだが、当の2人はキョトンとした顔で暁理に聞き返した。

「あの、研修って?」

「何のことですか?」

 2人のその様子に暁理は「あれ?」と声を上げる。どうやら2人は研修のことを何も知らないようだ。

「ソレイユ様から聞いてない? 新人の光導姫は夏に研修を受けないといけないんだ。一応、そこで光導姫の特訓的なことや色々な情報を教えてもらったりするんだよ」

「・・・・・・懐かしいな。僕も去年受けたよ」

 光司も空気を読んだのか暁理の話題に乗ってくる。そして、その目を懐かしそうに細めた。

「え!? そうなんですか!?」

「私とレッドシャインは何も聞いてませんけど・・・・・」

 その初耳の情報に陽華と明夜は今日一番の驚きの表情を浮かべた。夏といえばもうすぐではないか。

「ど、どうしよう明夜! 私達どこでいつ行けばいいか聞いてないよ!?」

「お、落ち着きなさい陽華。ま、またソレイユ様に聞きに行けばいいのよ」

 あまりのテンパり具合に2人は本名でお互いのことを呼び合っているが、そのことに2人は気がついていない。暁理は2人の本名を元々知っているからよかったが、少々迂闊な行為と言えるだろう。

「大丈夫だよ2人とも。研修は決まって8月、夏休みに開催されるしその場所ももう決まってるから。まあ、詳しい日程なんかはまたソレイユ様が教えてくれると思うよ」

 研修はほとんどが学生の光導姫・守護者が時間の取れる夏休みの8月に開催される。これは光導姫だけでなく守護者も含まれる。まあ、研修を受けなければいけない者は、ある条件に当てはまっている者だけなのだが。

 暁理の言葉を聞いた2人はとりあえず研修がまだ先なことにホッとしたような表情を浮かべている。

「しっかし、君はすごいね。1年でランキング10位って・・・・・・かかしが君は化け物だって言ってたよ。でも、そんな君も研修を受けたってことは()()学校には行かなかったんだね」

 暁理が光司の方を見る。実際1年でランキング10位とは本当にすごいことだ。なにせ全世界の守護者ランキングで10位ということなのだから。そう言った意味ではアカツキは光導姫ランキングで全世界25位なので密かな自慢である。

「ええ、僕が守護者になったのは去年の4月ですけど、その頃はもう学校も決まっていましたしね。・・・・・・それにあそこは守護者や光導姫にとっては特殊な場所ですから。僕は普通の学生生活を望んでいましたしね」

 暁理は興味本位で光司があの学校に行かなかった理由を探ってみたが、どうやらそのような理由らしい。まあ、もっともだ。

 ちなみに研修を受けなければいけない光導姫・守護者はその学校に所属していない者が対象だ。

「あの、学校って・・・・・・?」

 陽華が何が何だかわからないといった感じで質問してくる。研修も知らなかったようだからその質問も当然だろうと、暁理は説明した。

「君たちが研修を受ける学校のことだよ。まあ、そこはちょっと特殊な学校でね。簡単に言えば、政府公認の光導姫・守護者のための学校ってところかな」

「「えーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」」

 陽華と明夜の絶叫が河川敷に響いた。


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