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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第429話 前髪野朗とイケメンと(1)

「ふぁ〜あ・・・・・・昨日は疲れてたからぐっすりだったな」

 大きなあくびを1つして、影人はのそりと自分のベッドから起き上がる。枕元に置いていたスマホを触ると、時刻は午前11時だった。夏休みらしく、前髪野朗は存分に惰眠を貪った形だ。

「・・・・・今日は12時からって事だったし、さっさと用意するか」

 ベッドから出た影人は洗面所に行って顔を洗い口をゆすぐと、リビングに足を運んだ。リビングには誰もいなかった。母親は仕事だろうが、妹の姿もない。また不定期のバイトだろうか。

「あいつもよく頑張るやつだな・・・・・・・・まあ、いいや。とりあえず飯だ」

 妹不在の理由をバイトだろうと適当に決めつけながら、影人は冷蔵庫を漁った。

 冷蔵庫から昨日の夕飯の残りであったきんぴらと納豆を取り出した影人は、チンするご飯を電子レンジで温める。そしてご飯が温まると、今度はラップを掛けていたきんぴらごぼうを電子レンジに入れた。その間に冷えたお茶をコップに注ぐ。

「いただきます。えーと、リモコンどこだ? あ、あった」

 食事の準備をした影人は、リモコンを操作してテレビをつけた。別に真剣に見るつもりはなく、ただの賑やかしなのでチャンネルにはこだわっていない。ゆえに、影人はつけたチャンネルそのままにした。

『――次のニュースです。以前からお伝えしていた世界の歌姫と名高い――さんの日本でのライブの詳細な日程が決まったようです。日程は、8月の15、16、17日の3日間。ちょうど8月の中旬、お盆の時期で、会場は東京ドームとのことです』

 ぼけーとニュースを流し見していた影人は、ゆっくりと冷えたお茶を飲んだ。ニュースの映像には、世界の歌姫なる少女のどこかで行ったであろうライブの映像が流されていた。どうでもいいが、お盆の期間という事は、また人の数がえげつなくなりそうだ。

「世界の歌姫ね・・・・・・・・・何だかこの人のニュース見てると、聖女サマのこと思い出すな。まあ、流石にこの人まで光導姫って事はないだろうが。もうそういう展開はお腹いっぱいなんだよな・・・・・」

 ファレルナの事や昨日の真夏の顔を思い出しながら、影人は疲れたようにそう呟いた。普段なら、家で光導姫などという単語は影人は呟かないのだが、今は自分1人なので気楽に呟いたという形だ。

「ごちそうさまでした。っと、もうそろそろ出なきゃまずいな。ったく、忙しない・・・・・・・」

 15分ほどして遅めの朝食、または早めの昼食を食べ終えた影人は食器を台所に持っていき、納豆のパックを洗った。食べ終えた納豆のパックは、洗わなければひどく臭うので、食べ終えたら洗えと母親から強く言われているのだ。

 こういうところは、いくら自分が謎の怪人として振る舞っていてる側面があると言っても、自分はまだまだ子供なのだなと自覚させられる。

 それから適当な物を用意した影人は、自宅の鍵を持って家を出た。

「・・・・・・行ってきます」

 誰もいない家にそう告げ、影人は紫織の家へ向かうべくマンションの駐輪場を目指した。

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