第424話 呪術師系生徒会長の実力(2)
「――どうやら、私の家は呪術師の家系らしいからだ」影人の脳裏に先ほど紫織が言っていた言葉、またはそれに関する話が思い出される。真夏が名乗り、ソレイユがいま答えた真夏の光導姫名は『呪術師』。果たして、これは偶然の一致なのだろうか。
そしてなるほど。確かに『呪術師』ならば、扱う力は「呪いの力」だ。であるならば、闇奴の右腕は真夏が飛ばしたあの札、より正確に言うのであれば、呪符によって呪われたからあのようになったのか。名は体を表すと言う。だが、そうなると色々疑問も出てくる。
(・・・・・・・・色々と突っ込みたいとこはあるんだが、まず1つだ。「呪い」って明らかに光の力ってよりは闇の力だよな? 光導姫がそんな力を扱う、扱えるってなんかおかしくないか?)
光導姫の力は光の力。影人の扱う闇の力とは反対の力であり、闇を浄化する力だ。真夏が光導姫である事は間違いない。だが、扱う力は呪いの力だという。
呪い、と聞いて一般の人々が思い浮かべるのは、恨み、妬み、殺意、怒り、などといった負の感情ではないだろうか。そしてそのような思いを糧とするのは、影人や闇サイド側の扱う闇の力だろう。少なくとも、呪いと聞いて明るい正のイメージを抱く人間はいない、とは言い切れないが極小数派だろう。
そんな影人の最もな問いに、ソレイユはこんな事を言ってきた。
『あなたの言いたい事は分かります。影人、あなたと初めて会った時、あなたに力を与えた時に私が言った言葉を覚えていますか? 私が与えるのは力だけ。それがどのような力になるのかは、あなたの性質に依存する。そういったニュアンスの意味の言葉です』
(ああ、だいたい覚えてる。確か朝宮と月下にもお前はそう言ってた・・・・・・・っ、そういう事か。『呪術師』の性質が「呪いに関するもの」だったんだな)
ソレイユの言わんとしている事を察した影人は、先に答えを述べた。影人の答えを聞いたソレイユは、その答えが正解である事を示すように『ええ』と言葉を発した。
『彼女の事は印象に残っています。彼女の家系と関係があるのか、とても珍しい性質でしたから。彼女は光の女神である私が力を与えました。だから、彼女の性質が闇に近しいような性質であっても彼女の本質が光ならば、それは光の力になるのです。実際、彼女の他にも影の力を扱う光導姫などもいますし。少々分かりにくいとは思いますが、これがあなたの問いに対する答えです』
(いや、ちゃんと分かったぜ。なるほどな。クッソ簡単に言うと、お前が力を与える場合性質は本質の属性に依存するってことか)
『はい、その理解で合っていますよ』
本質が光ならばいくら性質が光の力に似つかわしくないものでも、それは光の力になり得る。真夏は本質が光で、性質が「呪いに関するもの」であったため、光導姫でありながら呪いという負のイメージが強い力を扱う、影人から見れば矛盾した存在に感じられたのだ。




