第421話 生徒会長は呪術師(4)
「了解っす。あとお茶は頂けると嬉しいです」
「やーっと休憩か。本当疲れた・・・・・・・私はちょいと一服してくるよ。吸わなきゃやってられない」
「もう、お姉ちゃんはそんなに動いてないでしょ? あと、タバコは体に悪いから辞めた方がいいって――」
タバコを咥える動作をした紫織に、真夏がどこか不満そうな表情を浮かべる。そんな真夏の言葉に、紫織は耳を押さえた。
「あー、聞こえない。それじゃあ私はちょっと失礼するよ。10分くらいしたら戻って来るから」
紫織はそう言い残すと,そそくさとどこかへと逃げてしまった。
「あ、ちょっとお姉ちゃん! 全くもう・・・・・・ごめんね、帰城くん。姉のだらしないところを見せちゃって」
「全然大丈夫ですよ。お気になさならいでください。先生は俺のクラスの担任です。先生にそういう一面がある事はよく知ってますんで」
困ったようにそう言ってきた真夏に、影人は苦笑いを浮かべた。何だかんだ紫織とも3ヶ月ほどの付き合いだ。紫織の事は他のクラスの生徒よりは、よく知っている。
「よく知られているのは身内としては恥ずかしいけど・・・・・・・・・言っても栓のない事よね。じゃあ少しだけ待っていてくれるかしら帰城くん。いま麦茶を淹れて――」
その時、不意に真夏の言葉が途切れた。
真夏の言葉を聞いていた影人は、不思議そうな顔で真夏を見た。
「・・・・・・・・・・・」
「会長? どうかしましたか・・・・・・・・?」
不意に言葉を途切らせた真夏に影人がそう声を掛けると、真夏はハッとした顔になり影人にこう告げた。
「ごめんなさい帰城くん、少し急用を思い出したわ。申し訳ないけど、麦茶はお姉ちゃんに出してもらって! 本当にごめん! 10分くらいで戻って来るから!」
「え? か、会長・・・・・・・・・・!?」
突然走り去っていった真夏に、影人は困惑した。いったいどうしたというのか。
「さっきの反応は・・・・・・・いや、まさかな」
真夏の背が角を曲がった事で見えなくなる。真夏の先ほどの反応に違和感、いや既視感を覚えた影人は何か予感がした。
「・・・・・・・・・・俺の思い違いならそれでいい。だが、俺の嫌な予想通りなら・・・・・・クソッ、確かめるしかねえか」
影人は面倒そうにそう呟くと、真夏を追いかけるべく走り出した。どうも予感がする。あの反応は、自分が時たまする反応に似ている気がした。
そう。影人がソレイユから合図を受けた時のような反応に。
そして、その合図が指す事実は1つしかない。
影人は予想が外れてる事を祈りつつ、自身も家の角を曲がった。




