第419話 生徒会長は呪術師(2)
「ん? たぶんガラクタ・・・・・・・・・って言ったら婆様に怒られるな。多分だが、これは呪術用の道具ってやつだと思う」
紫織は、古びた箱の蓋に置いていたそれらの奇妙な物を見ながらそう呟いた。
「じゅ、呪術用の道具・・・・・・・? え、いったいどういう事っすか。何でそんな道具が倉の中に? ていうか何で先生はこれが呪術用の道具だって分かったんすか?」
紫織の予想の斜め上の言葉に、珍しく影人は狼狽した。まさか現実でそのような言葉を聞くとは思っていなかったからだ。
「お前の反応は正常極まりないものだが、そんなに一気に質問をするな。私は厩戸皇子・・・・・・聖徳太子じゃないんだからさ。まあでも、お前の2つの質問の答えは1つの答えで返せる。それはな帰城。――どうやら、私の家は呪術師の家系らしいからだ」
「は・・・・・・? 呪術師、ですか・・・・・・・・?」
紫織の2度目のまさかの答えに、影人はポカンと口を開けてそう聞き返した。呪術師、呪術師。呪術師というのは、呪いという術を持つというあの呪術師か。
「ああ。といっても、私の婆様――母方の祖母が言ってた事だから、私もよくは知らないんだがな。でも婆様が言うには、榊原家は代々呪術師を生業としていた家系なんだと。昔はそれで食えていたらしいが、60年くらい前から科学の進展に伴って衰退しだしたらしい。それで、気がつけば普通の家と変わらない家になったんだとさ。まあ、私はずっと婆様の妄想話だと思ってたけどな」
紫織は人型の紙人形を手で弄びながら言葉を続けた。
「だが、この紙人形とか札やらを見るにどうやら妄想話じゃなかったらしいな。この感じだと倉の中には、この手の変な物がまだまだありそうだ。はあ、私の酒代とつまみ代がより遠のいていったわ」
「肩を落とす理由が露骨すぎますよ・・・・・・・・・でも、そうだったんですか。俺は呪術師が実際に何をするのか、してたかは分かりませんけど、本当にいたんですね。この事、会長は知ってるんですか?」
目に見えてテンションが下がった紫織に軽く突っ込みを入れながら、影人はそんな感想を抱いた。実際のところ、呪術師という者に本当に呪いの力や不思議な力があったのかどうかは分からないが、そういう職業があったのは、少なくとも確かなのだろう。
「知ってるよ。ていうか、真は婆様のその話をずっと信じて育ってきてな。だから、口癖もちょいと変わってるんだ。例えば――おーい真。唐突だが、さっきお前が言ってた菓子パンが無くなってた件だがな。あれ、食べたの私だ。学校から帰って来たらちょっと小腹減っててな」
紫織が1人いそいそと倉の物品を運んでいた真夏に向かってそう告白した。しかし何故だろうか。自分の罪を告白したというのに、紫織の表情は何一つ変わっていなかった。反省もクソもないなと、影人は少し呆れた。
「やっぱりお姉ちゃんだったの!? 呪うわよ!?」
紫織のその告白を聞いた真夏は、物品を紫織の前に置くとその顔色を怒りに染めた。




