第418話 生徒会長は呪術師(1)
「とりあえずマスクやるからこれ着けろお前ら。暑いかもだが、そこは我慢しろよ」
紫織がジャージのポケットからマスクの袋を取り出した。まあこの埃臭い倉の中を掃除するのなら、マスクは必要だろう。影人と真夏は紫織から受け取ったマスクを着用した。
「じゃ、最初はこの手前のやつから片付けるぞ。とりあえず全部外に出す」
紫織もマスクを着用して、2人に指示を飛ばした。まずは手前にある埃を被った物品の整理からだ。
「了解っす。んじゃ俺はこのボロい扇風機から運びます」
影人は倉の手前に置かれていた旧型の扇風機を抱えた。モヤシの影人からしてみれば中々に重いが、これくらいの重さならば自分だけでも運べる範囲だ。
「じゃあ私はこっち側の山から処理するわ。お姉ちゃんもサボらないでよ」
真夏が影人とは反対側の物品の山を指差しながら、紫織に釘を刺した。真夏は紫織の妹であり風洛高校の生徒会長なので、紫織が面倒くさがりだという事は影人と同様、いやそれ以上に知っているのだろう。
「分かってるよ。私はお前らの補助しつつ、外で物品の整理するからさ。今回はサボりゃしないわよ」
紫織は面倒くさそうに真夏に言葉を返すと、影人側の小さな木の箱を持って倉の外に出た。とりあえず紫織がさっき言ったように、倉の中の物は1度外に出す感じだ。
それからしばらくは、3人とも倉の物品を外に出す事に専念した。
そして1時間ほどすると、倉の中の手前にあった物品は大方外へと出された。
「ふう・・・・・・・1時間でこれだけっすか。分かってはいましたけど、果てしないっすね。この倉、見た感じ2階もありますよね?」
「ああ、ちゃんとあるぞ。しかも2階は私も開けた事ないから何がどれだけ入っているのか分からん」
「・・・・・・・・・・ブラックボックスじゃないんですよ。これでギチギチだったら最悪じゃないですか」
外に出された物品を見ながら、影人と紫織は面倒くさそうな表情を浮かべた。1階の物品もただでさえまだまだ多いのに、これで2階も同じくらいの量があったならば、確実に日曜日で終わらないだろう。
「でも文句ばかり言ってても終わらないわ。さ、帰城くん、お姉ちゃん。休んでないでバンバン運ぶわよ。あ、お姉ちゃんはここの物品の整理しなきゃだっけ。なら帰城くん、私たちはどんどん運びましょ!」
2人が軽く絶望していると、真夏がカラッとした笑みを浮かべて手を叩いた。この倉掃除は紫織が音頭を取らなければならないはずだが、気がつけば真夏がリーダーシップを発揮していた。これも生徒会長という役職ゆえか。
「あ、はい・・・・・・・」
影人は真夏の言葉にそう答える事しか出来ず、再び倉の物品を運び出すべく倉へと戻った。外とは違い、ひんやりとした空気が火照った肌を冷ましてくれる。出来ればずっとこの中にいたいが、残念ながらまたすぐに外に出なければならない。
「先生、この古い掃除機置いときますよ・・・・・・・・って、それ何ですか?」
影人が外に旧型の掃除機を運び出すと、紫織が何やら奇妙な物を見ていた。その奇妙な物とは人型の紙人形や不可思議な模様が書かれた札、さらには短刀や作り物の眼球などといったようなものだった。




