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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
413/2051

第413話 生徒会長、現る(1)

「マジで暑い・・・・・・・何でこんな昼に外に出なきゃならんのだ」

 キーコキーコと自転車を漕ぎながら、影人は愚痴を漏らした。

 今日は7月26日の金曜日。時刻は午前12時を少し過ぎた辺りだ。影人は自転車でとある場所に向かっていた。

「あの面倒くさがり先公の家の倉掃除・・・・・・だるいな」

 そう。影人がいま向かっている場所は、影人のクラスの担任教師である榊原紫織の家だ。紫織にある弱みを握られている影人は、夏休みに紫織の家の倉掃除を手伝うように脅されていた。

 弱みは完全に影人の身から出た錆だ。だから、本来なら自分はとやかく文句を言うことすらおかしいのだが、影人もまた人間。面倒な事は面倒なのだ。

 しかも、影人は面倒くさがり。ゆえに、普通の人間よりもそういった愚痴は出るというものだ。

「しかも今日までの4日間の間に休みを満喫しようと思ってたのに、ゲーセンの時は暁理に呼び出しくらうわ、次の日はソレイユが『お茶をしましょう!』とかクッソどうでもいい事で神界に呼びつけやがるし・・・・・・・・はあー、不完全燃焼な気分だぜ」

 ブツブツと癖である独り言を呟きながら、影人は炎天下のなか自転車を漕ぎ続ける。途中すれ違った小さな男の子が「ママー変な人」と影人を指差したが、男の子の手を握っていたお母さんが「しっ! 見ちゃいけません!」と厳しめに言っていた。だが、チャリを漕ぎながらブツブツと独り言を呟いていた前髪野朗は、傍から見れば明らかに変人なので、子供の指摘は正しいと言えるだろう。親御さんの教育は間違っていない。

「さてと、確か家出る前に確認した感じだと・・・・・こっちか」

 しかし、前髪野朗はまるでそんな声など聞こえなかったかのように、道を曲がった。昨日寝る前と家を出る前に紫織の家までのルートは調べたので、大丈夫のはずだ。

「んで次は・・・・・・・げっ、この坂登らないといけないのかよ」

 道を曲がり少し道なりに進むと、目の前に坂が見えた。まあ勾配はそこまで急ではないので、あまりキツくはないと思うが。

「ああ、嫌だな・・・・・・せめて冬だったらな。夏だし明らかに登りきったら汗だくだくじゃねえか。ただでさえ、夏は嫌いだっていうのによ・・・・・」

 心の底から嫌そうなため息を吐きつつも、影人は坂を登り始めた。そこまで汗をかくのを嫌うのならば、自転車を押せばいいじゃないかと思う人間もいると思うが、それはそれで時間がかかるし、その分灼熱の太陽に照らされる時間が増えるという事だ。つまるところ、あまり結果は変わらない。

 ちなみに影人が夏が嫌いな理由は、夏に嫌な思い出が1つあるのと、後は単純に蒸れるしよく汗をかくからだ。夏の季節に、影人の前髪を含めた髪の長さはあまりいただけたものではない。

『――なら髪を切りゃいいじゃねえか。バッサリとサッパリとよ。前から思ってたんだが、お前なんでそんなに髪伸ばしてんだよ?』

 影人が夏が嫌いな理由を心の中で思い返していると、イヴが突然そう話しかけてきた。もちろん影人にしか聞こえない念話でだが。

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