第406話 夏だ、補習だ、クソッタレ1(5)
例えばこの問題の答えはという問いかけに、「わかりました! 答えはなんかの数字です!」といった答えを返したり、この座標の位置はという問いかけには、「分からない、でも分からないから足掻くんだ!」といった意味不明な答えを返してきたりと、それはそれは壮絶なまでにアホだった。そんなんでよく期末のテスト通ったなと思うほどである。
「それじゃあ、私はこれで失礼します・・・・・本当に言いたくはありませんが、また次回の授業でお会いしましょう・・・・・・・・・」
トボトボとどこか哀愁漂うような背中を見せながら、数学の男性教師は教室を後にした。
「やっと午前の補習は終わりか。というかなぜ俺たちより教師の方が疲れているんだ?」
「知らん。それより食堂行こうぜ。腹減った」
「だな。今日のメニューなんだろな」
「つーか榊原先生の授業怖かったな・・・・・・真面目にやってんのに、すっげえキレるし」
「本当にな。俺たちアホだぜ? 仕方ねえじゃん」
「うるせえぞアホ共。おら、アホはアホらしく飯食いに行くぞ」
午前の補習を終えたアホ6人はゾロゾロと教室を出た。風洛高校は夏休み期間でも学食は空いているので、6人は1階へと向かった。
「うん? 夏休みだってのにまあまあ混んでるな。こりゃ先に席を確保した方がいいか」
Cがキョロキョロと辺りを見回す。夏休み中であるのに、学食エリアにはけっこうな数の生徒たちがいた。おそらく部活動の生徒たちと、夏の講習を受けている生徒たちだ。
「お、ちょうどあそこ6席空いてるぞ。あそこにするべ」
Dが空いている席を指差す。おあつらえ向きに3席、その向かいにまた3席空席があった。
「そうだな。じゃあ最初は俺と天才(笑)とCが待つことにして、DとEとFは先に注文してこいよ。2人ともそれでいいか?」
Aが5人に向かってそう提案した。Aの確認の言葉にBとCはそれぞれ頷いた。
「異議なし」
「俺も異議なしだが、貶すでもなく普通に天才(笑)は逆にメンタルに来るからやめろ」
「ああ、それはすまん。じゃ、そういう事だから先に行ってこいよ」
「「「ういー」」」
そういうわけでDとEとFは先に昼飯を注文しに行った。AとBとCは席に座って3人を待つ。
それから3分後、DとEとFがトレーを持って戻ってきた。
「お待っとさん。今日の学食は、豚しゃぶ定食とチキンカツ定食と肉野菜炒め定食だったぜ」
「おお、サンキュー。んじゃ、俺はチキンカツ定食にしようかね。行こうぜ、B、C」
「「おー」」
Fの情報にお礼を言ったAは何を頼むかを即座に決めるとBとCにそう呼びかけた。ちなみに、Fは豚しゃぶ定食で、DとEはチキンカツ定食だった。
それからA、B、Cもそれぞれトレーを持って席に戻ってきた。Aは決めていた通りチキンカツ定食、Bは肉野菜炒め定食、Cは豚しゃぶ定食だ。
「「「「「「いただきまーす」」」」」」
6人はそれぞれ手を合わせ昼飯にありついた。昼飯を食っている間、6人はいかにも男子高校生らしい話に花を咲かせた。




