第404話 夏だ、補習だ、クソッタレ1(3)
そもそも、こいつらが補習に呼ばれた理由はこいつらが中間試験の時にカンニングをしたからである。仏の顔も3度までと言うが、仏も1度で見捨てるほどの自業自得ぶりだ。
「今は高2の夏だ! まさしく青春真っ盛り! 遊びまくるぜベイベ! 夏の海が! 水着女子たちが俺たちを待ってる季節のはずだ! だって言うのに俺たちは補習だ! 何故なのか!?」
何度でも言おう。お前らがカンニングしたからである。
Bは真剣そのものの表情で拳を握る。熱い、熱い口調で自説を語るB。いかにもアホっぽい言葉であるが、Bはアホなのでその事には気がつかなかった。ああ、憐れかな。
「そうだ・・・・・・・こんな夏はおかしい!」
「ああ、その通りだぜ!」
「海は? 山は? 異性とのときめく出会いはどこだ!?」
「水着女子山ガールはいずこに!?」
「儚くも永久のカナシだぜ!」
そして残りもアホなので、Bに速攻感化されたようにそれぞれ知能指数2くらいの言葉を叫んだ。ああ、救いようのないアホどもだ。
「――坊やだからさ。じゃねえ、さっきから何やってやがんだアホ共」
「「「「「「!?」」」」」」
どこか気怠げな女性の声が響く。盛り上がっていた6人は驚いたように声のした方向に顔を向けた。
「ったく、朝から元気だな。こっちは予定外の仕事が入って眠いし気分も悪いってのに」
教室前方の扉。半開きになっているその扉にもたれかかるようにして、1人の女性がいた。ダウナーな感じのその女性は、風洛高校の教員の1人であり、どこぞの前髪が所属する2年7組の担任教師でもある、榊原紫織であった。
「「「「「「せ、先生・・・・・・・」」」」」」
先ほどの盛り上がりはどこへやら、アホ共は血の気の引いたような顔でそう呟いた。
「あ、あの一体いつ頃からいらっしゃったんですか・・・・・・・・?」
教壇に立っていたBが、恐る恐るそう聞いた。あのテンションを一体いつ頃から見られていたのか。答えによっては、かなり恥ずかしい目に合うだろう。
「ああ? そうだな・・・・・・お前が教壇に立ち始めた辺りからか?」
「それほぼ最初からじゃないですか!?」
ぬああああと頭を抱えるB。どうやら今夜はベッドでのたうち回る事になりそうだ。出来れば一生回っていてくれ。
残りの5人も羞恥から顔を赤く染め、無言で俯いた。Bは叫んだが、5人は発散せずに溜め込むタイプだったようである。
「どうでもいいけど、さっさと教壇から降りろ。 そこは私の場所だ」
「は、はい! すんませんでしたー!」
紫織の言葉を受けたBはすぐさま教壇を降りて、そこらの席へと座った。
「さて、んじゃ補習を始める前にだ。お前らには面倒だが、言っておかなければならない事がある」
教科書と紙を何束かを教卓に置いた紫織は、面倒くさそうにそう前置きした。
「「「「「「ゴ、ゴクリ・・・・・・」」」」」」
6人は紫織のその前置きに緊張した表情を浮かべた。いったい何を言われるのだろうか。




