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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第399話 今はまだ(4)

 こういった場面でもただ自分に必要な言葉を掛けてくれる人だから、自分は闇に堕ちたのだ。そういう人だから、この人の目的が叶ってほしいと過去の自分は思っていたはずなのに。

 だと言うのに、その目的の1つである探し物に関する情報収集も自分は怠っていた。実力も地に落ち、やるべき事もやっていなかった。そんな自分はやはりクズ野朗だ。

「・・・・・・・レイゼロール様、2つだけお願いがあります。聞いていただけますか?」

 クズ野朗という事を自覚した響斬は、決意と覚悟を滲ませた声音でそう呟いた。

「・・・・・・言ってみろ」

 響斬の声音からただならぬ決意を感じ取ったレイゼロールは、ただ一言許可の言葉を口にした。

「では、まず1つ。・・・・・・僕の封印を解くのはまだ待ってもらいたいんです。闇人としての力を解放すれば、身体能力も今の状態とは比較になりません。そうすれば、刀も容易に振れるし僕の剣技も今よりは遥かにマシになるでしょう。ですが、そうすればぼかぁそれに甘えてしまう。それじゃあ、剣は極められない。昔の僕には届かないんです」 

 封印を解けば、確かに響斬は今よりは確実に強くなる。だが、封印を解いて剣を振るってもその重みはまるで違う。

 響斬の剣の基礎は人間時代に培ったものだ。本当に剣の腕を取り戻したいのならば、肉体の状態も人間時代と同等のものでなければならない。

 今の脆弱な肉体で満足に剣を振るう基礎を身につける。そして最終的には、純粋な剣の腕だけで全てを斬ってみせる。響斬は本気だった。だからこそ、そのような提案をしたのだ。もう1度、自分が強くなるために。

「・・・・・・・・・分かった。その願いを了承する」

「ありがとうございます。では、2つ目の願いを言わせていただきます」

 レイゼロールに1つ目の願いを了承された響斬は、内心ホッと息を吐いた。だが、問題は2つ目だ。この願いは了承されない可能性もある。響斬は気を引き締め、2つ目の願いを口にした。

「2つ目の願いは、また僕を日本に戻してくれないか、という事です。とりあえず1週間はまだこっちにいるつもりです。その間はひたすら剣の研鑽に努めます。ですが、それ以降はまた日本に戻りたいんです」

「・・・・・・・・理由を聞こう」

 響斬のその謎とも言える願いの理由をレイゼロールは訊ねた。

「1番の理由は情報収集です。僕がずっとサボっていた事を今更ながらやりたいです。今の時代は便利な事にネットがありますから、昔よりは遥かに情報収集が楽です。まあ、その分眉唾の情報も多いですけど・・・・・・・・・とにかく、ここにはネット環境がない。日本の僕の家にはありますから、日本に戻りたいというのが、理由です。もちろん、日本に戻っても剣の鍛錬は続けます。・・・・・・・ずっとサボっていた僕を信用は出来ないと思いますが、どうかお願いしたいです」

 そもそもの自分の最上位闇人としての仕事。それを響斬はやりたい。いや、やろうと今は思っていた。本当に今更だ。それでも響斬は久しぶりにレイゼロールに会って、彼女の力になりたいと思っていた。

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