第391話 第6の闇対第7の闇(2)
「それはそうだろうよ。というか、闇人としての力を何にも使わずに、純粋な剣の腕で鉄やら俺の硬質化した体を斬れた昔のお前がおかしかっただけだ。そういった絶技も込みで、お前はレイゼロールから『剣鬼』の名を与えられたんだろ」
響斬のボヤきに、冥は少しだけ呆れたように言葉を返す。いま冥が述べたように響斬の2つ名は『剣鬼』。そののほほんとした見た目とは真逆の2つ名だ。人知を超えた剣の腕。その絶技の数々から響斬はその2つ名を与えられた。
「ははっ、『剣鬼』ね。確かに、ぼかぁレイゼロール様からその2つ名を賜わったけど、今の僕には過ぎた名だ」
響斬が力ない笑みを浮かべる。そしてその響斬の言葉を最後として、突然の静寂が2人の間に訪れた。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
両手で刀を構える響斬。拳を構える冥。突然の静寂から5秒後、先に仕掛けたのは冥だった。
「シッ・・・・・!」
「っ!?」
5、6メートルはあった距離を一息で詰めてきた冥。そんな冥に響斬は何とか反応した。
「はっ・・・・・・!」
右腕を引く冥に、響斬は両手で左の逆袈裟斬りを放つ。刀身は真っ直ぐに冥の右の脇腹へと吸い込まれていく。
「・・・・・・遅せえ」
しかし、冥はその攻撃を軽く身を捻っただけで回避した。そして、そのまま剣を振りかぶって隙を晒している響斬に右手の掌底を繰り出す。
「ぐっ・・・・・!?」
明らかに喰らってはまずい攻撃なので、響斬は今持てる全ての反応を以って、体を右に倒した。次の瞬間、冥の掌底が虚空に弾け凄まじい音を立てた。真場の縁、その絶対の領域に冥の掌底が当たったからだ。
「へえ・・・・・・・反応の方はまだ何とかなってるか」
「そりゃ痛いのは嫌だからね・・・・・! 本能が無理矢理反応を上げさせてるんだよ!」
冷や汗を浮かべながら響斬は半ばそう叫んだ。危なかった。今の一撃をモロに受けていれば、間違いなく戦闘不能だった。
(というか、本当にどうしよう。ぶっちゃけまだ腹部すっごく痛いし。今は何とか我慢出来てるけど、あと2分もしない内に限界来るだろうし・・・・・・やっぱり短期決戦しかないね、こりゃ。ならアレしかないか)
頭の中で瞬時に自分の事、現在の状況を分析しながら、響斬は冥から距離を取る。冥は響斬に視線を向けるばかりで追撃してこなかった。その事に響斬は疑問を抱いた。
「・・・・・・・・・追撃しては来ないんだね、冥くん。何でかな?」
とりあえず、響斬は冥にそう問うてみた。すると冥は響斬を見透かしているようにこう言った。




