表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
38/2051

第38話 光導姫アカツキ(3)

一方、ソレイユは影人の答えを聞いて何が何だかわからないといった感じの声を上げた。

『えっと・・・・・・影人、なぜロッカーの中に?』

 闇奴が出現したこの状況ならば、一刻も速く現場に向かわなければならないのに、なぜこの少年はロッカーの中にいるのか。ソレイユは意味がわからなかった。

(ロッカーは中からけっこう外が見える、そしてこの時間にロッカーを開けようとする奴はいない。後はわかるな?)

『分からないから聞いているんですっ!!』

 ソレイユはキレた。

『私は何で闇奴が出現したのにあなたがロッカーの中にいるか聞いたんですッ! それとも何ですか!? あなたはバカなんですか!? ええ、そうでしょうとも! あなたはバカです!!』

(落ち着けよ若作り。バカはお前だ。待ってれば答えはわかる)

 ソレイユにバカ呼ばわりされたロッカー野郎は、けっこう頭にきたので影人はそう返した。

『影人ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 その結果、ソレイユはぶちぎれた。

 と、そんな無言での言葉のやり取りをしていると、バタバタと足音が聞こえてきた。

 影人がロッカーの隙間から様子を窺っていると、陽華と明夜が現れバタバタと走って上履きから自分たちの靴に履き替えた。そしてそのまま外へと消えた。

 そして2人に少し遅れて、光司が現れ2人と同じように靴を履き替え外へと消えていった。

「・・・・・・わかったか、これが俺がロッカーの中にいた理由だ」

 2分ほどしてロッカーの中から出た影人は、肉声でそう呟いた。普通に念話でいいのではと思われるかもしれないが、こればっかりは癖なので仕方ない。

「俺のクラスは自習中だったから教室を抜けるのは俺が一番速い。今回、闇奴が出現した場所はこの近くだからテレポートはない」

 影人はそう言いながら、上履きを履き替えた。そして、そのまま外へと向かう。

「俺が一番速く現場に向かえば、体力のない俺のことだ。途中であの2人か香乃宮に追いつかれる。そうなれば、俺に疑惑の目が向くだろ」

 頭の中に浮かぶ闇奴の場所を確認しつつ、影人は校門を出る。そして小走りになりながら影人は目的地を目指した。

「だから俺はあいつらから見つからずにあいつらを見る事の出来るロッカーの中に隠れた。そうすればあいつらの後を追う形になるし、いつも通りあいつらには俺の姿は確認できない。わかったかバカ女神?」

 少し息が上がりながらも、影人は自分がロッカーの中に隠れていた理由を話し終えた。

『う・・・・・・確かにあなたの考えは理論的です。・・・・・・すみませんでした』

 ソレイユは影人に謝った。影人はただ自分の正体を気づかれてはいけない、ということを考え行動していただけだったのだ。

「ごめんなさいが言えるのは、素直なことだぜ」

 そう言って影人は走るペースを少し速めた。

『っ・・・・・・! すみません影人、また近くで闇奴が出現したようなので私はそちらの対応に移ります。あの子たちを頼みました』

「まじかよ、お前も大変だな。・・・・・・だが、まあ頼まれた」

 その言葉を最後にソレイユの声は聞こえなくなった。少しソレイユの多忙さに同情しつつ影人はそう請け負った。

 しかし、実際は光司がいるから大丈夫だろうと思う影人であった。








 影人が出てしばらくした風洛高校の授業中に、軽快に廊下を走る音が響く。

「ああ、もうっ! 恨むよソレイユ様!」

 ボブほどの長さの髪を揺らしながら、その人物は昇降口に急いだ。そして昇降口で上履きから自分の靴に履き替える。そして頭の中に浮かぶ目的地を目指し駆け出す。

 正直、学生の身である自分には光導姫の仕事は難しいものがある。なにせ、今回の場合のように平日の真っ昼間に突然呼び出されることもあるからだ。つまり学生は授業中というわけで、その度になんとか抜け出さなければならない。

 そしてそれはリスクを負う行為だ。理由をつけても教師には、いい印象を持たれないし、よく授業を抜け出す生徒と認定される。しかも、友達には(理由にもよるが)よほど胃の調子が悪い子だと思われる。これが個人的には一番痛い理由だ。

 他にもテストの出題箇所が、自分がいない間に出題されるかもしれないなどのリスクがあるが、それは後で友達に見せてもらえばいい。

「まあ、これが()()()だったら、そうもいかないだろうけど」

 クスっと笑いながらただただ駆ける。今回、闇奴が出現した場所は風洛高校から近いため、自分は走って現場に向かっているというわけだ。

 脳内にぶっきらぼうで自分以外友達がいない友人の姿を思い浮かべながら、その人物は思い出す。

 自分がなぜ光導姫になったのかを。

「・・・・・・仕方ないし、今回も頑張るか!」

 右手に緑色の宝石のついたブレスレットが太陽の光でキラリと輝く。ニヤリと笑顔を浮かべて、早川暁理は青空の下、光導姫『アカツキ』としての使命を全うするため地面を蹴った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ