第373話 聖女来日7(1)
「やはり、あなたが・・・・・・・・・」
その名を聞いたファレルナがポツリとそう呟いた。ファレルナの予想した通り、やはり目の前の人物は今日の昼間、ちょうど話題になっていた人物であった。
「・・・・・・・俺を知ってるか。なら、俺がどんな奴かも知ってるな?」
金の瞳を真っ直ぐファレルナに向けながら、スプリガンはそうファレルナに問いかけた。その問いにファレルナは、手紙に書かれていた内容、昼間の陽華や明夜の話を思い出しながら、こう答えた。
「はい、闇の力を扱う正体不明・目的不明の人物で最上位闇人、レイゼロールとも渡り合う戦闘力を持ち合わせていると聞きました。そして光導姫や守護者を助けた人物であるとも」
「・・・・・・・・・・大方そんなところだろうな。お前たちサイドの俺に対する評価は。だが、1つ情報が抜け落ちているな。まだ広まっていないのかどうかは知らないが、俺が光導姫や守護者を助けた理由は――」
「あなたの目的のため、ですか? そして光導姫や守護者があなたの目的の邪魔になるならば、あなたが光導姫や守護者の敵に回る」
「・・・・・・・どうやら、あんたは知っていたようだな」
自分が話そうとしていた話の内容をファレルナに言われたスプリガンは、そう言葉を変更した。
「・・・・・・あなたとは1度お会いしたいと思っていました。突然あなたが現れた事には驚きましたが、今は会えて嬉しいという気持ちの方が大きいです」
その言葉が真実であるという風に、ファレルナは微笑んだ。その笑みに恐怖や戸惑いといった感情は見受けられない。そしてファレルナは優雅にスプリガンに挨拶をした。
「初めまして、スプリガンさん。私はファレルナ・マリア・ミュルセール。あなたのご指摘通り、光導姫ランキングでは1位の位を頂き、『聖女』の名を賜っています。以後、お見知りおきを」
(・・・・・・・・・俺の敵対宣言の事も知ってながら、この場面で優雅に挨拶か。肝が据わってるのか、ただの天然か・・・・・いずれにしても、やっぱ普通じゃないな)
その挨拶を聞いたスプリガン、もとい影人は内心そんな事を思った。
『なあ、影人よ。やっぱこの聖女サマ、頭がどっかイカれてんじゃねえか?』
そんな影人の感想に茶々を入れて来るように、イヴが念話を行ってきた。イヴの念話を聞いた影人は、心の内でこう呟いた。
(さあな。たぶんそういった感じじゃねえとは思うが、いまさっき俺が思ったように聖女サマが普通じゃないのは確かだぜ)
イヴの念話に否定気味に答えを返す影人。ちょうど影人がそう念話した時、ファレルナが次の言葉を放った。
「それでご質問なのですが、スプリガンさんが私の前に現れた理由は何なのでしょうか?」
核心をついた質問。そもそもの理由をファレルナはスプリガンに問うた。




