表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
37/2051

第37話 光導姫アカツキ(2)

「新人の光導姫の命を救った? なら別に怪しいとかじゃなくていい人じゃないか。まあ、確かに色々疑問はあるけど・・・・」

 かかしの話を聞いた限りでは、アカツキはそのスプリガンに悪い印象は感じなかった。アカツキの反応を見たかかしも、「まあ、そうなんだけどよ」と困ったように頭を掻いている。

「そこだけ聞けば確かにそいつは謎はあるが良い奴さ。でも問題は――そいつが闇の力を使うってことだ」

「闇の力だって・・・・・・・? なら、そのスプリガンというやつは――」

「ああ。どうやら言葉を話す知性は有してたみたいだし、闇人の可能性がある」

 ぬるい風がアカツキのフードを揺らす。アカツキの言葉を引き継いだかかしは、肩に乗せていた短槍を下ろし、右手で持ち直した。

 そして「これでわかったろ」と自分がアカツキの元に来た理由を話す。

「いくら光導姫と守護者を助けたとはいえ、そいつは闇の力を使うこの上なく怪しい奴なんだ。んでどうやら、そのスプリガンって奴は前にも1度光導姫を助けてるらしいが、そいつが味方だとは限らない。そして奴は、光導姫と闇奴との戦闘に姿を現す。だから、いま全ての守護者はどんなに危険度の低い戦闘でも助けに来ることになってんのさ」

 かかしがようやく話し終えたとばかりに、再び大きく息を吐いた。そして、顔の筋肉でも疲れたのか、いつものヘラヘラとした顔に戻る。

「・・・・・なるほど、要は君は僕のボディーガードをしに来た訳だ」

 話を理解したアカツキがかかしの話を一言でまとめる。どうやら、最初に言った助けに来たという言葉は嘘ではなかったらしい。

「話はわかったよ。一応、お礼は言っとく。助けに来てくれてありがとう。でも、僕にボディーガードはいらないかな。君といるのは疲れるし」

「おいおい傷つくなあ。俺だって面倒くさかったのに、わざわざ来たんだぜ? お礼にそろそろあんたのちゃんとした素顔でも見せてくれよ」

 かかしが下卑た笑みを浮かべながら、アカツキのフードに覆われた顔をジロジロと見る。アカツキは不快そうに鼻を鳴らし、その場を後にする。

「残念だけど君に素顔を見せるほど僕は安くないよ。守護者としての君の腕は信用してるけど、人間としての君を僕はどうも信用できないからね」

 そしてアカツキはどこかへと姿を消した。

「ははっ、嫌われたもんだな」

 後に残されたかかしはヘラヘラとした顔で、電灯の下、1人で笑っていた。









「暑い・・・・・・」

 まるで真夏かのような陽光が空を照らすなか、影人は自分の席で机に突っ伏していた。

 季節はまだ5月中頃だというのに、今日の最高気温は28度になるらしい。朝の天気予報で確認したため、いま影人が感じている暑さはそれくらいということだ。

 今は4時間目の国語の授業中。普通なら生徒が机に突っ伏していれば、教師から叱責の声が飛んでくるところだが、そんな声は飛んでこない。なぜなら今日の国語の授業は教師が体調不良のため、自習になったからだ。

 影人は自習の課題は面倒だからまた後でやろうという算段で、この時間は寝ようと思ったのだが、あまりの暑さに寝るに寝られないというのが今の状況だ。

「くそ、地球温暖化め・・・・・・」

 どこか的外れな文句を言いつつ、影人は机と一体化するように自らの頬を机に密着させる。最初は多少冷えていた机も今は影人の体温のせいでぬるくなっている。

 そう言えば、今朝は陽華と明夜がしっかり? と遅刻寸前で学校にやって来た。2人がギリギリでやって来たことに、上田勝雄はどことなく嬉しそうだった。

「・・・・・・・まあ、元気なのはいいことだ」

 暑さで頭がやられたのか、いや元々頭がやられていたのだろう、影人は虚無の瞳を前髪の下に作りながら、机から五月さつき晴れの空を見上げた。

 とりあえず喉が渇いたので水筒を鞄から取り出そうとしたその時、脳内にあの音が響いた。

 キイィィィィィィィィィィィィィィィィン

「っ・・・・・・」

 影人は面倒くさそうに息を吐くと、鞄から黒い宝石のついたペンデュラムを取り出しズボンのポケットに入れる。そして、自習中のため賑やかな教室からそっと出る。高校生の自習何て言うのは、基本的には静かなものとは無縁である。

「今が自習中で助かったぜ・・・・・」

 影人は小走りで昇降口へと向かう。そして、昇降口に着くとそこにあるロッカーの1つに身を潜めた。

「・・・・・・・・」

 中は掃除用具やらで狭いが、なんとか入れる状況だった。影人はそこで息を殺して、しばらく動かなかった。

『久しぶりですね影人。すみませんが今回も――あら? なぜ視界がこんなに暗いんですか?』

 頭の中にソレイユの声が響く。確かにこの感覚はけっこう久しぶりだ。影人は今は何も話せないため、念話でソレイユの疑問に答えた。

(俺がロッカーの中にいるからだ)

 影人はソレイユと念話が出来るが、ソレイユは影人の視界を共有して見る事が出来る。まあ、基本的にはこのように闇奴が出現したような場合くらいしか共有はしないと言っていたが。

『・・・・・・・・は?』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ