第364話 聖女来日5(3)
「それでは退場の指示を行います。まず前列の人たちから順番に退場してください」
ファレルナが退場して、風音の指示に従い最前列の生徒たちも退場し始める。それに伴って周囲も少しばかり賑やかな感じになった。皆、ファレルナの講演に対する感想などを話し合っているのだろう。
「ねえ陽華、この後どうする? とりあえず風音さんにお礼言いに行く?」
「え? あ、ああそうだね! そうしよっか。どうせ私たち退場するの最後の方だし、その時にお礼言いに行こ!」
視線を再び隣の女子生徒に移していた陽華は、明夜の言葉に一瞬反応が遅れた。結局、明夜の提案は陽華も考えていた事なのですぐに了承した。
(何でだろ・・・・・さっきの拍手の音が気になってる)
席を立ち上がるまで、陽華はそんな事を考えていた。
「風音さん! 今日はありがとうございました! 聖女様の講演、ものすっごく良かったです!」
「感動の嵐、って感じでした。何だか勇気をもらったっていうか、これからも頑張っていける感じがしました」
先ほどとは打って変わり、人の気配がほとんどなくなった講堂内。陽華と明夜は講堂内に残っていた風音にそう話しかけた。
「あ、陽華ちゃん明夜ちゃん。案内できなくてごめんなさいね? ちょっと忙しくって。そう言ってもらえてファレルナも喜んでると思うわ。私もファレルナのあの話は心に響いたし」
講堂内の点検を行っていた風音は、2人に気がつくと表情を少し緩めてそう言葉を返した。
「いえ、全然大丈夫でしたよ! 新品さんが案内してくれましたから。あ、あとアイティレさんは他の生徒の人たちと一緒に退場しましたか? せっかくだから挨拶しておきたかったんですけど」
陽華がキョロキョロと周囲を見渡す。周囲に残っている生徒は自分たち以外には誰もいないので、アイティレは退場したのだろうと陽華は考えていた。
「うん、そうなんだけど・・・・・・・実はアイティレはいま生徒会室にいるの。彼女との顔見知りは、私以外にはアイティレしかいないから、ちょっとお話しして待ってもらっているの」
「? あの風音さん、彼女って?」
風音の言葉に疑問を持った明夜がそんな質問をした。明夜の質問に、風音は少しだけ悪戯っぽく微笑んでこう答えた。
「それはもちろん、ファレルナに決まってるでしょ? ふふっ、少しだけだけど、ファレルナと個人的に話せる時間を取ったから、これから一緒に生徒会室に行きましょうか」
「「え、ええーーーーー!?」」
風音のその言葉に、2人は思わずそう叫んでいた。
2人の声が講堂内に響いた。




